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心に刻まれた正義 赤ちゃんは弱者を助ける正義の味方を肯定する

掲載日:2017年3月22日

© 2017 Kazuo Hiraki.第三者が介入する・介入しない攻撃相互作用のアニメーションを見せた後に、乳児にそのアニメーションに登場する色や形が対応した2つの実物の立方体を示し、どちらに手を伸ばして触るのかを測ります。

実験の様子
第三者が介入する・介入しない攻撃相互作用のアニメーションを見せた後に、乳児にそのアニメーションに登場する色や形が対応した2つの実物の立方体を示し、どちらに手を伸ばして触るのかを測ります。
© 2017 Kazuo Hiraki.

東京大学大学院総合文化研究科の開一夫教授らの研究グループは、意味のある言葉をまだ発しない赤ちゃんが強者から弱者を守る行為を肯定することを発見し、そのような傾向が私たち人間には生来的に備わった性質である可能性を示しました。

乳児が攻撃されている他者を守るような第三者の介入を理解し、肯定するかどうかという問題は、道徳、正義、高い社会性といった人間を人間たらしめる特徴として考えられています。また、攻撃されている弱者を守る行為は、一般的には賞賛の対象となり、道徳、正義、ヒロイズムといった概念が連想されます。これまで、人間はこの種の介入を就学前の時期までに行うようになることが知られていました。しかしながら、いつこの種の行為を肯定するようになるかについては知られていませんでした。

研究グループは、攻撃されている弱者を守る行為が乳児の中でいつ頃から見られるのか等、その発達的起源を6ヶ月児と10ヶ月児132人を対象にアニメーションを用いた実験を行い、調べました。その結果、第三者が攻撃されている弱者を介入するアニメーションと介入しないアニメーションを見た場合とでは、6ヶ月児は介入する第三者を好むことが明らかになりました。加えて、乳児は第三者の介入が攻撃者から犠牲者を守る行為であるとみなしていることがわかりました。その一方で、介入する第三者の意図を理解して、介入行為を評価するのは10ヶ月の乳児からであることがわかりました。

本研究の成果は、弱者を守る第三者の介入が乳児によっていつ頃から認識され、肯定的に評価されるのかという、乳児の発達の軌跡を解明する上で重要です。今後は、弱者を守るための介入を肯定する能力が、いつそしていかにして道徳や正義感、ヒロイズムといった概念と結びついていくのかを明らかにすることが必要です。

「生後6ヶ月という月齢で、攻撃する側と攻撃される側、そして第三者の介入者の関係を理解している結果が得られた時、とても驚きました」と開教授は話します。「6ヶ月児の社会的な経験量が少ないことを考えると、私たち人間には、弱者を守る介入を肯定する性質が備わっており、そのような性質が私たちの正義感において大きな役割を担っているのかもしれません」と続けます。

論文情報

Yasuhiro Kanakogi, Yasuyuki Inoue, Goh Matsuda, David Butler, Kazuo Hiraki, and Masako Myowa-Yamakoshi, "Preverbal infants affirm third-party interventions that protect victims from aggressors", Nature Human Behaviour Online Edition: 2017/01/31 (Japan time), doi:10.1038/s41562-016-0037.
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