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真核生物の鞭毛を駆動するモーター分子の構造 微小管と結合する部位の立体構造を原子レベルで解明

掲載日:2014年10月29日

東京大学大学院農学生命科学研究科の加藤有介特任研究員、田之倉優教授、英国リーズ大学アスブリー構造分子生物学センターのStan Burgess(スタン・バージェス)リーダーらの研究グループは真核生物の鞭毛が運動するために必要な分子である鞭毛ダイニンの微小管との結合部位(MTBD)の立体構造を原子レベルで解明した。

図1 鞭毛ダイニンの微小管結合部位(MTBD)の溶液中における20の最適構造の重ね合わせ(左)。鞭毛ダイニンのMTBDを構成する2次構造要素の命名を記述しN末端側からC末端側へレインボーカラーで着色した(青から赤へ)。裏側から見た平均構造(右)。これらのパネルはPymol (Schrodinger, LLC., New York, NY)で作成した。 図2 鞭毛ダイニン(左)と細胞質ダイニン(右)のMTBDの表面電荷の比較。これらのパネルはSwiss PDB viewer (Guex and Peitsch, 1997)で作成した。

c 2014 加藤 有介、田之倉 優
図1 鞭毛ダイニンの微小管結合部位(MTBD)の溶液中における20の最適構造の重ね合わせ(左)。鞭毛ダイニンのMTBDを構成する2次構造要素の命名を記述しN末端側からC末端側へレインボーカラーで着色した(青から赤へ)。裏側から見た平均構造(右)。これらのパネルはPymol (Schrodinger, LLC., New York, NY)で作成した。 図2 鞭毛ダイニン(左)と細胞質ダイニン(右)のMTBDの表面電荷の比較。これらのパネルはSwiss PDB viewer (Guex and Peitsch, 1997)で作成した。

鞭毛ダイニンは真核生物鞭毛中に規則的に配置されダブレット微小管上を滑るように行き来することで鞭毛運動を駆動させる。ヒトの鞭毛ダイニンの異常は精子運動の異常による男性不妊や細胞運動の異常による内蔵左右逆位の原因になる。

研究グループは今回、鞭毛ダイニンMTBDが細胞内での物質の輸送に関わっている細胞質ダイニンのMTBDには見られない柔軟に可動する突起構造(フラップ)を備えることを明らかにした。さらに驚くべき発見は鞭毛ダイニンMTBDの分子表面の電荷分布が細胞質ダイニンのそれとは大きく異なることである。

これらの特徴や生化学的解析などにより鞭毛ダイニンの微小管との結合能力と結合機構が細胞質ダイニンと大きく異なることが示唆された。こうした特徴は鞭毛ダイニンが鞭毛中の限られた空間内で他のダイニン分子と協調的に機能する上で非常に重要であると考えられる。本成果は真核生物の鞭毛運動機構の全容解明のために重要な基盤的知見となる。

鞭毛ダイニンの微小管結合部位(MTBD)の分子動力学計算の結果
c 2014 Sarah A Harris、加藤 有介、田之倉 優、Stan A Burgess

 

鞭毛ダイニンの微小管結合部位(MTBD)の立体構造の全体像
c 2014 加藤 有介、Stan A Burgess、田之倉 優

 

プレスリリース

論文情報

Yusuke S. Kato, Toshiki Yagi, Sarah A. Harris, Shin-ya Ohki, Kei Yura, Youske Shimizu, Shinya Honda, Ritsu Kamiya, Stan A. Burgess, and Masaru Tanokura,
“Structure of the microtubule-binding domain of flagellar dynein”,
Structure, Online Edition: 2014/10/24 (Japan time), doi: 10.1016/j.str.2014.08.021.
論文へのリンク

リンク

大学院農学生命科学研究科

大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻

大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 食品生物構造学研究室

英国リーズ大学アスブリー構造分子生物学センター Dr. Stan Burgess (English)

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