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トポロジカル省電力素子の基礎原理を確立 「異常量子ホール効果」の量子化則を実験的に検証

掲載日:2014年9月2日

半導体試料の積層構造に強い磁場をかけると、試料の端にエネルギーの損失なく電流(エッジ電流)が流れます。この現象は「整数量子ホール効果」と呼ばれ、低消費電力デバイスなどへの応用が期待されています。しかし、量子ホール効果には強い磁場が必要という欠点があります。「トポロジカル絶縁体」と呼ばれる物質は、内部が絶縁体状態であるにも関わらず表面は金属状態を示す物質です。これに磁性元素を添加したものが「磁性トポロジカル絶縁体」で、物質内部に磁化をもつ強磁性体にもなります。表面の金属状態と強磁性の性質が協調的 に作用することによって、無磁場でも量子ホール効果が現れます。この現象を、外部から磁場を加えなくてもエッジ電流が発生できることから、整数量子ホール効果とは区別して「異常量子ホール効果」と呼んでいます。そして、トポロジカル絶縁体の異常量子ホール効果には磁場をかける必要がないため、省電力素子への応用が期待されています。

性トポロジカル絶縁体では物質内部の磁化によって量子ホール効果が表われ、磁場をかけなくても試料端にエネルギー損失のない電流が流れる。

© 2014 M. S. Bahramy.
磁性トポロジカル絶縁体では物質内部の磁化によって量子ホール効果が表われ、磁場をかけなくても試料端にエネルギー損失のない電流が流れる。

今回、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻のチェケルスキー・ジョセフ特任講師(当時)、吉見龍太郎博士課程大学院生、川崎雅司教授、十倉好紀教授らの共同研究グループは、トポロジカル絶縁体に磁性元素のクロム(Cr)を添加させた磁性トポロジカル絶縁体[Cr0.22(Bi0.2Sb0.8)1.78Te3]薄膜を作製しました。この薄膜を用いて電界効果型トランジスタ構造を作製し、ホール抵抗を測定することで試料が異常量子ホール状態になっていることを確認しました。さらに、制御電圧や温度依存性を詳細に調べることで、異常量子ホール効果の縦伝導度と横伝導度に関する量子化則が、整数量子ホール効果と同様の振る舞いを示すことから、両ホール効果が本質的に同じであることを見いだしました。これにより、異常量子ホール効果についての理解が進み、無磁場でエッジ電流を利用した省電力素子の実現へ大きく前進しました。

プレスリリース (理化学研究所)

論文情報

J. G. Checkelsky, R. Yoshimi, A. Tsukazaki, K. S. Takahashi, Y. Kozuka, J. Falson, M. Kawasaki and Y. Tokura,
“Trajectory of the anomalous Hall effect towards the quantized state in a ferromagnetic topological insulator”,
Nature Physics Online Edition: 2014/8/18 (Japan time), doi: 10.1038/nphys3053.
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