東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

クリーム色の表紙に赤と黄色のイラスト

書籍名

経営の再生 戦略の時代・組織の時代 [第4版]

著者名

高橋 伸夫

判型など

356ページ、四六判、上製

言語

日本語

発行年月日

2016年3月10日

ISBN コード

978-4-641-16470-3

出版社

有斐閣

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経営の再生

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1960年代、日本企業と比べ、米国企業の多角化はずっと進行していた。実は米国では、収益性のある投資機会を求めて、独禁法を逃れて、事業的に関連もない企業を合併・買収することが流行し、巨大なコングロマリットが出現していたのである。多角化が進んだ米国企業で関心を呼んだのがプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントいわゆるPPMであり、1970年代には戦略論の時代が到来する。
 
ところがPPMのセオリー通りに、成熟産業の事業から利益を吸い取ってしまったので、米国の伝統ある産業の衰退が一気に進むことになる。関連性のない事業を買収してしまったことのつけは重く、本社の経営者は現業部門からの提案を評価することも業績を見ることもできなくなっていた。本社の経営者はポートフォリオ的なデータ管理に終始し、企業を統一的に組織として維持して行く能力を失い始める。市場競争上、不可欠なはずの米国企業の組織能力は破壊され、米国経済を牽引してきた米国の多くの資本集約型産業は、国内外市場でのシェアを急速に失うことになる。
 
米国では1980年代に入ると、さすがに米国企業の生産性の伸びの低下を嘆く論調が目立ってきた。そして日本企業の躍進を背景に、文化という言葉がキーワードになってくる。米国では日本企業の経営を見習えと主張する本も何冊か出版された。しかし本当はその必要はない。1940年代~1950年代の米国の偉大な会社がやってきたことやオリジナルの概念、アイデアを見直せば良いのである。ビジネスは豪華な建物でも、戦略的分析でも、5ヶ年計画でもない。会社が本当に存在したのは人々の心の中だった。米国企業の創立者達は、従業員が生活の不安を感じることなく、それゆえ事業の成功に必要な仕事ができるような企業文化を社内に作り出すことが自分達の役割であると考えていたではないか。
 
19世紀末から20世紀初頭、30年にわたってフランスの大企業の社長として活躍した専門経営者ファヨールは、経営管理論の最初の書物を著したが、それは組織について書かれた書物だった。そして米国でも、AT&Tの子会社のベル電話会社の社長になった専門経営者バーナードによって、1938年、近代組織論の最初の書物が出版される。公式組織を成立させ、それを長期にわたって存続させることは大変な努力と才能を要する仕事である。コミュニケーション不足、共通目的の喪失、協働意欲の欠如のどれ一つが発生しても、実はバーナードのいう公式組織ではありえない。公式組織の成立・存続こそが経営者の果たすべき重い役割なのである。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 高橋 伸夫 / 2016)

本の目次

序章 ショート・ストーリー
第1章 多角化戦略
第2章 ポートフォリオ
第3章 経営者の時代
第4章 企業集団と経営者革命
第5章 企業文化
第6章 経営者の役割
第7章 戦略と組織
第8章 企業・戦略の組織論