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赤い表紙が目印の新赤版

書籍名

岩波新書 近代発明家列伝 世界をつないだ九つの技術

著者名

橋本 毅彦

判型など

210ページ、新書判、並製

言語

日本語

発行年月日

2013年5月21日

ISBN コード

978-4-00-431428-8

出版社

岩波書店

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近代発明家列伝-世界をつないだ九つの技術

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18世紀から20世紀までの発明家を10人 (8人と1ペア) 取り上げて、彼らの発明のプロセスと社会背景•歴史背景を解説したものである。取り上げたペアは飛行機を発明したライト兄弟。他はすべて単独でいろいろな発明をしてきた人物たちである。その10人を3つのグループに分けた。最初は航海時計を発明したジョン・ハリソン、蒸気機関の分離凝縮器を発明したジェームス・ワット、鉄道や蒸気船の建設・建造に関わったI・K・ブルネルの3人。イギリスの産業革命とそれに続く帝国主義の時代に活躍した技術者たちである。彼らは航海、工場などの動力機関、鉄道や蒸気船などを近代化する役割を果たした。第二は、エジソン、ベル、デフォレスト。彼らの貢献した技術製品は、蓄音機、電話、真空管。いずれもメディアに関係する技術、音声を蓄えたり通信したりすることを可能にした技術である。エジソンとベルは同時代人であり、二人とも発明家でありながら、発明品を実用化し企業を経営することに深く関わった。デフォレストもまた自分の発明品を製造し販売することに意欲をもったが、その道のりは険しいものであった。最後のグループは、自動車のベンツ、飛行機のライト兄弟、そしてロケットのフォン・ブラウンである。ライト兄弟、フォン・ブラウンについては何冊もの伝記が書かれており、それらを参考にして彼らの発明と技術開発の道のりをたどった。ベンツに関しては簡単な自伝と少数の伝記しかなく、自動車の発明までの経緯やその後の発展をたどるのにやや苦労したところである。フォン・ブラウンは、少年時代から宇宙ロケットの打ち上げを夢見てその実現に邁進した人物だが、彼を取り巻く時代状況は「戦争の世紀」とも呼ばれた激動の20世紀に色濃く刻印されており、その中で彼は力強く生き抜いたという様相をもつ。いずれの10人の発明家についても、発明や技術開発にあたってのそれぞれの工夫、そして彼らを取り巻く社会状況・時代状況の中で生き抜いていく際の苦労を浮き彫りにするように伝記を描いた。

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 橋本 毅彦 / 2016)

本の目次

はじめに
第1章 ハリソン -- 世界時刻の計測
第2章 ブルネル -- 大英帝国の技術ビジョン
第3章 ワット -- 産業革命の原動力
第4章 エジソン -- 発明と経営の間で
第5章 ベル -- 電信から電話へ
第6章 デフォレスト -- 無線通信とラジオ放送
第7章 ベンツ -- ガソリンエンジン搭載の自動車
第8章 ライト兄弟 -- 空間意識を変えた飛行機
第9章 フォン・ブラウン -- 宇宙ロケットとミサイル
おわりに
参考文献

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