東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

大きなコンパスでスケッチを描いている人物のイラスト

書籍名

描かれた技術 科学のかたち サイエンス・イコノロジーの世界

著者名

橋本 毅彦

判型など

312ページ、四六判、並製

言語

日本語

発行年月日

2008年12月19日

ISBN コード

978-4-13-063350-5

出版社

東京大学出版会

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描かれた技術 科学のかたち

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東大出版会のPR誌『UP』。その表紙裏に「学問の図像とかたち」という連載記事がある。本書はその連載記事をもとにして、大幅に加筆して20あまりのトピックについて、絵や写真などの図像を見せながら、歴史上重要な科学技術活動の一端を解説したものである。近年、科学史における図像の利用に関する研究は大変な活況を呈している。私自身、米国留学中 (スライド投影の時代)、科学史技術史の図像を見せながら巧みにその内容や背景を解説する講演に数多く遭遇し、そのたびに魅了されてきた。その後、図像を利用するだけでなく、図像そのものを論題に据えるような論文も出版されるようになった。これらの研究論文を参考にしたり、また自分で面白く、また重要そうな科学史上の図像を探し出したりすることで、『UP』で連載記事を書き、またそれを基に本書の各章を執筆した。『UP』の連載は全24回だったが、その中からいくつかを取捨選択し、さらにいくつかを追加することで本書は全体で29の話題を紹介することになった。技術者の作業風景を描く図、技術者が製作する機械やその部品を描く図、自然は一種の機械であるという機械論的自然観を直接間接に示すような図、そして自然界に存在する物質、生命、現象を描いた図、科学者の活動の様子を表すような図。これらの5つのテーマに分けて、図を示しながら科学史技術史の背景を説明した。たとえば細菌学を樹立したロベルト・コッホの事例。顕微鏡を利用して細菌を観察し、それをスケッチに描き出すとともに、写真撮影も行った。結核菌を発見した際には、当時開発された合成染料を巧みに用い、背景を薄茶色や茶色に、細菌自体を青く染め上げることで、結核菌の姿を浮かび上がらせる様子を図に表現した。コッホが細菌を研究し、研究成果を同僚医学者たちに見てもらうために図像は決定的に重要な役割を果たした訳である。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 橋本 毅彦 / 2016)

本の目次

はじめに
第I部 技術の風景
 第1章 職人の風景
 第2章 鉱山の仕組み
 第3章 工芸の描写
 第4章 岩礁の灯台
 第5章 刀匠の秘伝
第II部 機械のかたち
 第6章 ダ・ヴィンチのスケッチ
 第7章 機械の劇場
 第8章 船大工の製図室
 第9章 機械のモデル
 第10章 エジソンのインスピレーション
第III部 機械仕掛けの自然
 第11章 機械仕掛けの宇宙
 第12章 宇宙のネジ
 第13章 レーウェンフックの小動物
 第14章 精気の噴水
 第15章 匂いのかたち
第IV部 自然の形態学
 第16章 ヒマラヤのシャクナゲ
 第17章 ダーウィンのフィンチ
 第18章 青の細菌
 第19章 鉄の結晶
 第20章 冬の華
 第21章 雲の分類学
 第22章 音の模様
 第23章 渦の生成
 第24章 大地の地図
第V部 科学の場所
 第25章 天の城
 第26章 黄金の木
 第27章 実験の情景
 第28章 ビーナスの影
 第29章 クリスマスの講演
おわりに -- 科学技術の活動における図像の機能
文献解題、図・引用出典一覧、索引

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