東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

グレーの表紙中央にネジの拡大写真と書名

書籍名

講談社学術文庫 「ものづくり」の科学史 世界を変えた <<標準革命>>

著者名

橋本 毅彦

判型など

288ページ、A6判

言語

日本語

発行年月日

2013年8月8日

ISBN コード

978-4-06-292187-9

出版社

講談社

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「標準」ということをキーワードに製造技術を始めとする各種の技術の体系、現代のグローバルな社会の基盤を構成する技術システムの成り立ちと歴史背景を読み解こうとしたものである。前半は、フォードの大量生産体制の技術史的なルーツを解説したものになっている。フォードの大量生産体制の鍵は互換性をもつ部品の量産とそれを効率的に組み立てる流れ作業からなる。しばしばコンベヤーの前に立ち単純作業に明け暮れる労働者の人々を思い起こす。だがそれとともに、多数の機械部品を旋盤やプレス機などの各種工作機械で精度よく加工する機械技術の発展が存在することを忘れてはならない。工作機械によるそのような金属製品の製造技術はアメリカの技術者の十八番ともいうべき技術であり、19世紀の間によく発展し、イギリスの技術者から「アメリカ式製造方式」と呼称されたほどだった。部品を量産し、一つの同型のモデル(フォードのT型車など) をたくさん組み立てていく。その際に対応する各構成部品がそれぞれ同一の形とサイズをしていなければならない。もし差があったとしてもガタついたりしないように「許容誤差」の範囲内での差でなければならない。そうすることで各部品には個性がなくなり、できあがったどの部品を利用しても微調整の必要なく完成品が組み立てられることになる。部品が互換性をもつとはそのようなことを言う。その製造技術をもう少し一般化させて利用すれば、すべての機械に対して利用できるような汎用的なネジなどの基本部品を生み出すこともできるはずである。あるいはいくつかのタイプを設定した上で、標準的なネジを量産して利用してもらうこともできるだろう。実際そのようなネジの標準モデルが19世紀後半に提案されたが、広く普及することはなかった。
 
本書の前半が機械技術をめぐる標準について歴史を追ったのに対して、後半ではさまざまな技術体系や技術を利用する方式などで「標準」ということがどのような重要性をもつか、いくつかの事例を紹介して解説した。本書は実は10年ほど前に出版した『標準の哲学』という著作の改訂版であるが、前著では7章構成だったのを1章増加して8章構成にした。その際に追加した主な内容がコンテナ輸送に関するストーリーである。コンテナというサイズの規格化された金属製の箱を利用することで世の中の物流は一変することになった。それはネジや電圧の標準化といった技術標準とはやや異なる類の標準であるが、今日のグローバルな社会を生み出した代表的でありまた象徴的な技術体系の一つとも言える。本書後半では、このコンテナの話とともに技術標準のタイプや制定のされ方などについても解説を行った。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 橋本 毅彦 / 2016)

本の目次

プロローグ -- 水晶宮の鍵と銃
第1章 ジェファーソンを驚かせた技術 -- 標準化技術の起源
第2章 工場長殺人事件を越えて -- 「アメリカ式製造方式」の誕生
第3章 工廠から巣立った技術者たち -- 大量生産への道
第4章 ネジの規格を定める -- 互換性から標準化へ
第5章 旋盤とレンガ積みの科学 -- テイラー主義の出現
第6章 標準化の十字軍 -- 国家による標準化とその限界
第7章 技術システムの構築と標準 -- 二〇世紀の交通輸送革命
第8章 標準化の経済学 -- デファクト・スタンダードの功罪
エピローグ -- スタンダードの行方

関連情報

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