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表紙に市町村合併の実施年度の統計地図

書籍名

地方行財政の地域的文脈

著者名

神谷 浩夫、 梶田 真 、佐藤 正志、栗島 英明、美谷 薫 (編著)

判型など

254ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2012年3月20日

ISBN コード

978-4-7722-3142-8

出版社

古今書院

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地方行財政の地域的文脈

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なぜ、地方行財政の問題を地理学の立場から捉える必要があるのでしょうか。地方自治体とひとくちに言っても、規模や住民の特性、地域経済のありよう、地理的条件や歴史的経緯は大きく異なります。それゆえに、直面している政策課題もさまざまです。このような現実の中で、それぞれの地方自治体はどのように地域固有の政策ニーズを反映させながら行財政を運営しているのでしょうか。また、国は、こうした差異をどのような形で均し、すべての地方自治体において一定のサービス供給を可能にしているのでしょうか。
 
本書は、こうした問題意識の下で執筆されています。最低限の制度説明は行っていますが、むしろ地域的な差異に対してそれぞれの地方自治体がどのように対応し、その背後で国がどのような調整や誘導を行っているのかに焦点をあてています。
 
本書は4部12章で構成されています。
 
第1部では、国と地方との関係を、地方制度と財政トランスファーの点から整理しています。第2部では、行政サービスの外部化、迷惑施設の立地、福祉サービス (高齢者福祉 / 保育サービス)、公共事業を取り上げ、施策や問題の背後にある地域的な文脈に焦点をあてながら検討していきます。第3部では、市町村の地図を一変させた平成の大合併が、地方自治体の行財政の有り様をどのように変えていったのかを検討しています。第4部では、今後の地方自治のあり方を考えていくためのヒントとして、日本とは異なった地域的文脈の下で構築された海外の事例 (ドイツ・韓国) を取り上げて考察しています。第1部から第3部においても、大都市圏と地方圏の両方を含めた、全国各地の事例を取り上げています。
 
行政学や地方財政学に関心のある方は今まで読んできた文献や知見を地理学の立場から捉え直すことで、現場レベルにおける地方行財政の理解を深めていくことができると思います。また地理学に関心のある方は、本書を通じてこの領域が地理学の研究対象となりうることを理解していただけると思います。今まで自明のものと考えていた現象、あるいは不思議に思っていた問題の背後にある仕組みを理解する一助となれば幸いです。
 
本書は、テキストとして利用することを想定して (実際に本学の学部3、4年生向けの授業で利用しています)、できるだけ体系的そして平易に書かれています。図表や写真も多数収録していますので、幅広い読者に活用してもらえるのではないでしょうか。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 准教授 梶田 真 / 2017)

本の目次

第1部: 地域性と地方行財政
 第1章: 地方制度の改革と国 - 地方の関係の変化
 第2章: 地域間の財政力格差と財政トランスファー
第2部: 地方行政の地理的諸相
 第3章: 行政事務の外部化 - 自治体のサービス供給と効率化の方法
 第4章: NIMBY - 市町村のごみ処理とその課題
 第5章: サービス供給の地域差と均衡化
 第6章: ローカルなニーズとローカルなサービス -- 地域固有の福祉ニーズは満たされているのか
 第7章: 公共事業と「土建国家」
第3部: 地域の視点から「平成の大合併」を考える
 第8章: 「平成の大合併」の背景とその展開
 第9章: 合併市町村におけるサービス供給
 第10章: 市町村規模の拡大と地域自治制度
第4部: 今後の地方行財政のあり方を構想する
 第11章: ドイツの地方行財政 -- 海外の事例から日本の地方行政の問題を考える1
 第12章: 韓国地方自治体の規模と効率 -- 海外の事例から日本の地方行政の問題を考える2

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