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18JP【法】金井利之『原発と自治体』

書籍名

原発と自治体 「核害」とどう向き合うか

著者名

金井 利之

判型など

72ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2012年3月6日

ISBN コード

978-4-00-270831-7

出版社

岩波書店

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原発と自治体

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これまで、原子力発電所の問題について、自治体を正面から視点に据えるものは、立地自治体についての個別ルポルタージュを除き、多くはなかった。本書は、自治体行政学の視点から、福島第一原子力発電所のINESレベル7事故の発生1周年を機に、執筆したものである。その際のもう1つの視点としたのは、一種の公害としての「核害」である。これは、過去の公害事件が、地域的に偏在して発生し、第一義的に直面するのは当該地域住民・自治体であり、しかも、同時に当該自治体が、公害対策政策を国に先んじて進めたこともあれば、地域見料構造のなかで、必ずしも問題解決のために先頭に立つとは限らないことを念頭に置いたものである。公害問題においては、自治体のスタンスは、極めて重要な意味を持つからである。
 
通常の枠組では、原子力発電所事故は、公害の一種としてではなく、「原子力災害」というように「災害」の一種として扱われている。実際、東日本大震災という災害を契機に発生したので、災害の一部である。しかし、通常の自然災害ではそれほど長期にならないで、元の場所での「復興」に取りかかる道が見える。しかし、原子力発電所事故の場合には、短期避難を経ての早期復興と言うよりは、長期に不確実なリスクに晒されるなかでの対処が求められる。その意味で、単なる災害にとどまらず、公害として向き合うべきだと考えた。簡単に言えば、復興を加速化して早期に終了するという思考枠組では問題を解消することはできず、中長期に渡って対応し続けることが求められる。災害は復興でけりがつくが、核害は安易な「復興」を許さないのである。
 
本書では、今回の事故の被災自治体について検討した第1章と、それ以外の立地自治体を「未災自治体」として対応を検討した第2章からなる。第1章では、核害発生1年の時点で、想定されたシナリオを提示したものである。5年を経過した時点で振り返っても、ほぼ想定通りである。なお、「復興」という観点からは、今井照・福島大学教授との共編著で『原発被災地の復興シナリオ・プランニング』(公人の友社、2016年) が続編に当たる。
 
第2章は、次々と「再稼働」の判断が迫られるであろう、立地自治体について扱ったものである。執筆当時は、原子力エネルギー政策が見直される機運もあったかもしれないが、あえて、原子力推進構造の「レジリエンス (打たれ強さ)」を想定して書いた。5年を経過した時点で振り返ってみても、ほぼ想定通りである。なお、未災自治体の政策決定構造の内在的理解という観点からは、五百旗頭薫・東京大学教授他とによる聞き書き『大飯原子力発電所はこうしてできた 大飯町企画財政課長永井學調書』(公人社、2015年) がある。併せて参照されたい。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 金井 利之 / 2016)

本の目次

序章 「核害」という視点から
第1章 被災自治体と核害
1 国による被災の認定とは
2 被災の範囲 -- 国の認定と自治体の判断
3 避難自治体の役割 -- 避難が長期化するなかで
4 残留自治体 -- 避難していない被災自治体の役割
第2章 問われる立地自治体の役割
    -- 核害未災自治体は何をすべきか
1 立地自治体の意味を問い直す
2 立地自治体と安全性
3 既存原子力発電所と安全性の向上
4 原子力苛酷事故への対策 -- 立地自治体の立場から考える
おわりに
[主要参考文献]

関連情報

2013年度自治体学会賞 (研究論文賞) 受賞

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