東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

グリーンと白の表紙にイタリア建築の写真

書籍名

イタリア・アカデミックな歩きかた 都市をめぐる教養散策

著者名

丹野 義彦

判型など

232ページ、四六判、並製

言語

日本語

発行年月日

2015年12月25日

ISBN コード

978-4-641-17418-4

出版社

有斐閣

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イタリア・アカデミックな歩きかた

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イタリアの魅力はさまざまだが、本書では「大学巡り」という新たな魅力を紹介したい。本書はイタリアの9つの都市をめぐり、大学や学術施設を訪ね、歴史・学問・社会とのかかわりなどを紹介した。ボローニャは大学発祥の地である。パドヴァは科学革命発祥の地である。イタリアの大学には旅行ガイドブックには載っていない「知のテーマパーク」があちこちにある。ボローニャのアルキジンナジオ宮やポッジ宮、パドヴァのボー宮、ミラノの大学本部 (旧マッジョーレ病院) やブレラ宮などである。こうしたアカデミックな名所を歩きながら、各都市の魅力を紹介した。大学を散歩する楽しさを伝えるために、私は『こころの臨床ツアー』として、ロンドン編、アメリカ編、イギリス編の3部作を刊行してきた。本書はそのイタリア編にあたる。
 
イタリアのアカデミック街道
 
本書でとりあげた9都市のうち、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ミラノ、ナポリはイタリアの5大都市であり、交通のアクセスは良い。一方、ボローニャ、ピサ、パドヴァは大学都市であり、大都市から少し離れているものの、いずれも電車で簡単に行くことができる。各都市を結んだ線はイタリアの「アカデミック街道」と呼べる。本書はアカデミック街道を縦断しながら、イタリア史と学問史を尋ねる試みでもある。
 
イタリアほど各都市の個性が違う国もない。それぞれの都市は全く違った歴史を持ち、違った顔をしている。日本では、だいたいどの都市も似たり寄ったりの歴史を持ち、大学も同じようなキャンパスである。都市の個性は小さい。これに対して、イタリアではどの都市も他の都市と似ていない。大学もさまざまである。その都市や大学の個性を知ることが面白い。大学を散歩することによって、大学だけではなく、その都市全体の個性を味わうことができる。その意味では、本書の主人公は都市そのものである。
 
バーチャル・ツアーのすすめ
 
本書はバーチャル・ツアーにも対応している。インターネットで海外旅行の疑似体験が容易になった。ストリート・ビューを利用すれば、その地の映像がすぐに見られる。しかし、万能のように見えるインターネットも欠点だらけである。最大の欠点は断片的であることである。体系的な知識の枠組みがないと、情報の羅列となってしまい、心に残らない。また、必要な情報は意外に見つからないもので、検索には時間がかかる。こうした点では、書籍という媒体のほうがずっと優れている。
 
ネットに出ている情報は表面的なものに限られる。本当に面白いことはネットには出ていない。面白いことは書籍の中に隠れている。本書では多くの書籍を引用した。旅を主題にした本書は、実は読書の復権を訴えるものである。ネットと書籍は今後も相補的な関係を続けるだろう。本書を利用して、ネット情報の断片性を補いながら、バーチャル・ツアーを楽しんでいただけたら幸いである。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 丹野 義彦 / 2016)

本の目次

第1章 ローマ  宗教と科学がせめぎ合う歴史都市
第2章 ボローニャ  一度は行ってみたい大学発祥の地
第3章 フィレンツェ  ルネサンスを生んだアカデミーの街
第4章 ピサ  斜塔を支えるテクノロジー都市
第5章 ヴェネツィア  文化と環境の都市としてよみがえる街
第6章 パドヴァ  科学革命発祥の地
第7章 トリエステ  精神分析学と関連が深い街
第8章 ミラノ  ダ・ヴィンチが活躍したルネサンスの街
第9章 ナポリ  エロティック・アカデミック都市

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