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カラフルな水彩画のような表紙

書籍名

公認心理師エッセンシャルズ 第2版

著者名

子安 増生、 丹野 義彦

判型など

226ページ、A5判、並製カバー付き

言語

日本語

発行年月日

2019年1月

ISBN コード

978-4-641-17445-0

出版社

有斐閣

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公認心理師エッセンシャルズ (初版)

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児童虐待・犯罪・いじめ・ストーカーなど、世の中にはさまざまの心の病理現象があり、マスメディアに取りあげられない日はない。精神疾患はどこの国でも深刻な問題になっている。先進国では、成人の5人に1人、子どもの10人に1人は何らかの精神疾患を持っている。また、障害生存年数 (Disability-adjusted Life Year) という指標によると、先進国では、全疾患の負荷のうち38%が精神疾患によるものである。こうした社会状況に対応して、先進国では、メンタルヘルスへの対応が最優先課題となっている。100年前なら宗教家が人々のストレスを癒していただろうが、現代では、宗教家にかわって、科学的にしっかりしたメンタルヘルスの専門家の養成が必要となった。これまでの日本には心理職の国家資格がなかったが、2015年9月には、国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的として、公認心理師法が国会で成立した。
 
本書の編者である子安と丹野は公認心理師法の成立と推進に密接に関わってきた。子安は、2016年9月~2017年5月に開催された公認心理師カリキュラム等検討会の構成員として、丹野は公認心理師カリキュラム等検討会のワーキングチームのメンバーとして、カリキュラムの編成に深く関与してきた。
 
2017年9月に公認心理師法は施行され、2018年4月から各大学での養成が本格的に始まった。公認心理師をめざす学生は、心理学教育に関わる学部等で所定の25科目を修得し、大学院修士課程に進んで所定の10科目を修得するか、あるいは指定された機関で2年以上 (標準的には3年) 実務経験を積むことが求められ、そのうえで国家試験に合格しなければならない。行く手には、長い年月と高いハードルが待ちうけており、中途半端な気持ちでは成就しない。
 
本書は、学生が公認心理師科目を学ぶためのオリエンテーションとなるように編集された。タイトルの「エッセンシャルズ」とは、根本的に必要な事柄をすべて盛り込んでいるという意味である。
 
本書の第I部は、公認心理師の学部カリキュラムの内容とはどのようなものかを総覧する。第II部は、全くの新規科目である「公認心理師の職責」の概論である。第III部は、これも全くの新規科目である「関係行政論」概論である。とくに第III部は、国家資格としての公認心理師が活動するために必要な法律や行政についての知識をまとめており、これまでの心理学教育では手薄だった領域である。
 
今後、養成カリキュラムが充実し制度が本格化し、公認心理師が国民の心の健康の保持増進に大きく寄与することを強く願うものである。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 丹野 義彦 / 2018)

本の目次

第I部 公認心理師の学び
A.心理学基礎科目
    1  公認心理師の職責
    2  心理学概論
    3  臨床心理学概論
    4  心理学研究法
    5  心理学統計法
    6  心理学実験
B.心理学発展科目
  (基礎心理学)
    7  知覚・認知心理学
    8  学習・言語心理学
    9  感情・人格心理学
    10  神経・生理心理学
    11  社会・集団・家族心理学
    12  発達心理学
    13  障害者・障害児心理学
    14  心理的アセスメント
    15  心理学的支援法
  (実践心理学)
    16  健康・医療心理学
    17  福祉心理学
    18  教育・学校心理学
    19  司法・犯罪心理学
    20  産業・組織心理学
  (心理学関連科目)
    21  人体の構造と機能及び疾病
    22  精神疾患とその治療
    23  関係行政論
C.実習演習科目
    24 心理演習
    25 心理実習
D.大学院で学ぶこと
 
第II部  公認心理師の職責
    1  心理的支援の歴史
    2  公認心理師の役割の理解
    3  公認心理師の法的義務
    4  公認心理師の職業倫理
    5  心理に関する支援を要する者等の安全の確保
    6  守秘義務
    7  情報共有: 多職種連携・地域連携
    8~12  公認心理師の業務: 保健医療 / 福祉 / 教育 / 司法・犯罪 / 産業・労働
    13  問題解決能力と生涯学習
 
第III部 関係行政論
    1  法と制度を学ぶ意味
    2  法律の基礎
    3~5  保健医療分野
    6,7  福祉分野
    8,9  教育分野
    10,11  司法・犯罪分野
    12,13  産業・労働分野
 
第IV部 心理学関連団体
巻末資料: 公認心理師法
 
 

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