
書籍名
心理職・援助職のための法と臨床 家族・学校・職場を支える基礎知識
判型など
256ページ、A5判、並製カバー付き
言語
日本語
発行年月日
2019年2月
ISBN コード
978-4-641-17438-2
出版社
有斐閣
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
本書は、家族、学校、職場などの現場で公認心理士、臨床心理士、社会福祉士など対人援助に携わる実務家や心の専門家に知っておいていただきたい法の基礎知識、法的なものの考え方を提示するものである。しかし本書は、単なる法律の解説にはとどまらない。
対人援助者はただ法律を覚えるだけでなく、その知識が刻一刻と動く対人援助活動に即したものでなければ意味がない。法的な介入が臨床的にどのような作用を及ぼし、対人援助活動にどのように有効に展開させることができるかが重要になる。
同様に、子どもなどの弱者を守り保護するためには、心理臨床の理論や技法だけでは対応しきれない。問題や紛争に応じた法や制度を知り、それを発動するための具体的な法的要件を把握していなければ、緊急事態に対応できない。そうした法制度を正しく用いることが、対人活動援助において、最適な援助やサービスを提供することにつながる。
本書は、このような観点から、対人援助者が実務で直面する諸問題を取り上げて、法と臨床を架橋する実践知をまとめたものである。
近年の日本では、子どもの問題として少年非行、家族では児童虐待、離婚に伴う子どもの奪い合い、ドメスティックバイオレンス (DV)、高齢者虐待などが問題となっている。学校では、いじめや体罰、職場ではハラスメントや過重労働が大きな社会問題となっている。
これらの問題や紛争は、いずれも「法」と「臨床」の両方にかかわるという特徴をもっている。例えば、夫婦・親子・親族という家族関係のゆがみが、離婚・DV・虐待・扶養問題など法に関わる問題として浮上する。それゆえ、このような家族の紛争解決のためには、法に焦点を当てたアプローチと同時に、その水面下にある関係のゆがみに臨床的アプローチをしなければならない。
同様に、家族、学校、社会という子どもたちを取り巻く環境のゆがみが、非行やいじめ問題に反映される。その問題が、家庭裁判所や児童相談所に係属すれば、少年法や児童福祉法に基づきながら家族や学校における関係の調整を行うことが必要になる。このように、家族、学校、職場における人間的な問題の解決には、法と臨床の協働による関与が求められる。
対人援助者は、家族・学校・職場などさまざまな場面で、援助対象者の抱える紛争や悩みに関与する。その際に、法の目的や基本理念、手続の流れを理解した上でかかわることによって、より的確な対応とアドバイスができる。本書は、臨床との協働という観点から対人援助に関係する法の原則を解決したものであり、「対人援助活動の灯台」の役割を果たすことを期待されている。
(紹介文執筆者: 社会科学研究所 教授 水町 勇一郎 / 2020)
本の目次
第1章 児童虐待
第2章 ドメスティックバイオレンス
第3章 離婚
第4章 高齢者虐待
第2部 学校における法と臨床的対応
第5章 いじめ
第6章 少年非行
第7章 体罰
第8章 保護者対応
第3部 職場における法と臨床的対応
第9章 過重労働とメンタルヘルス
第10章 ハラスメント
関連情報
編集部のオススメBOOKs 編集部 (『コミュニティケア』266号Vol.21 No.4 2019年4月)
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