公認心理師必携 精神医療と臨床心理の知識と技法
心理職は、心理学の成果に基づき、人々の心理的問題の解決を支援する専門職である。我が国は多くのメンタルヘルスの問題を抱えており、その問題解決は社会全体の重要な政策課題であった。そのため心理職への社会的ニーズは高かったが、国家資格化は進んでいなかった。しかし、2015年9月に公認心理師法が国会で成立・公布され、2017年には施行となり、心理職が公認心理師として国家資格化されることとなった。先進国の中で国家資格化が非常に遅れていた我が国においても、心理職が漸く公認心理師としてメンタルヘルス活動に正式に参加できることとなったのである。
本書は、この公認心理師の専門的技能を解説した、我が国初の書籍である。臨床現場においてメンタルヘルス活動を適切に実践するための専門的な知識と技法を網羅し、しかも最新かつ実践的な臨床情報をコンパクトにまとめている。具体的には、チーム医療とエビデンスに基づく心理支援を基本コンセプトとし、専門性の高いメンタルヘルス活動を実践するためのレファンレンスブックとして編まれている。「これ1冊あれば大丈夫」といった安心感も持っていただける書物となっている。
保健医療領域におけるチーム医療に参加する場合は言うまでもなく、福祉や教育などの他領域においても適切な実践活動をするためには、精神医療の基本的な知識と技法は必須である。また、より専門性の高い心理支援を実践するためには、従来のカウンセリングや心理療法の知識や技法だけでなく、エビデンスに基づく臨床心理学の、最新の知識と技法の習得が必要となる。本書は、公認心理師が高い専門性を備え、多職種協働チームによるメンタルヘルス活動に貢献するための知識と技法を整理し、簡潔に解説した必携書となっている。特に、幅広い精神医療の制度や実践的手続きに加えて、今や社会的要請となっているエビデンスベイスト・プラクティスのための最新プロトコルが問題別で解説されている点は、他書にはない本書の特徴である。
このように本書は、公認心理師を目指して教育を受けている訓練生や若手心理職のテキストだけでなく、現場で働く中堅・ベテランの公認心理師が活動の最前線で困った際に参照できるレファレンスブックともなっている。さらには、公認心理師と協働して、より質の高い活動を展開することを目指す医療職をはじめとする他職にとっても、大いに参考にできる内容となっている。
(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 下山 晴彦 / 2017)
本の目次
1章 医療の基本問題
2章 チーム医療
3章 医療におけるメンタルヘルス
第2部 精神医療の基本
4章 精神症状のみかた
5章 診断とその経過
6章 治療のあり方
7章 薬物療法
第3部 精神医療システム
8章 精神医療資源
9章 精神保健サービス
10章 関連する法規と制度
第4部 心理師の専門技能
11章 心理師の役割とスキル
12章 心理アセスメントの技法
13章 個人心理療法
14章 家族・集団支援技法
15章 コミュニティ・アプローチ
第5部 問題別心理介入プロトコル
16章 不安関連障害
17章 抑うつ障害
18章 統合失調症スペクトラム障害
19章 発達障害
20章 心身症
21章 物質関連障害および嗜癖障害
22章 触法精神医療における心理的アプローチ
23章 身体疾患に伴う心理的問題
24章 プロトコルの適用が困難な事例への対応
関連情報
中嶋 義文氏 (三井記念病院精神科部長)、下山 晴彦氏 (東京大学大学院教育学研究科教授)=司会、内富 庸介氏 (国立がん研究センター 支持療法開発センターセンター長)
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03189_01