東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

淡い縦模様の入ったシンプルな表紙

書籍名

日本中世の権力と寺院

著者名

高橋 慎一朗

判型など

284ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年8月1日

ISBN コード

978-4-642-02932-2

出版社

吉川弘文館

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日本中世の権力と寺院

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日本の中世とは、十一世紀後半の院政成立から、十六世紀後半までの織田政権の時代までを指している。この中世という時代はどのような時代であったろうか? 日本の中世は、武士と寺院 (神社) が新しい権力として登場してきた時代である。平氏政権と、これに続く鎌倉幕府の成立によって、国家の軍事警察機能を担い、朝廷から独立した武家政権が日本に誕生した。いっぽう、中世の寺院は、単に権力者の精神的な支えであるだけでなく、荘園などの経済基盤や武力を持つことによって、朝廷や武士の政権に圧力を与えることができるような世俗的な権力にもなっていった。
 
本書は、中世に台頭した武士と寺院が、既存の権力である朝廷やその担い手である公家と、どのように競い合い、また逆に密接に協力しながら、それぞれの力を伸ばしていったかを明らかにした研究書である。とりわけ、朝廷・武士・寺院という三つの権力が複雑に絡み合う、中世の社会の姿が凝縮された、京都の六波羅という場所に注目し、それぞれの権力の実態を追究する。
 
まず、「I 武家権力の展開」においては、武家権力の内部構造の変化、地域への浸透、武家権力の末端を担う人々の活動について、その実態を明らかにしている。六波羅を本拠地とした平氏政権や、六波羅に設置された鎌倉幕府の出先機関・六波羅探題は、同じ京都を本拠とする朝廷と政治の主導権をめぐって調整をはかり、近隣の寺院と密接な関係を結んでいったのである。
 
次に、「II 浄土宗西山派と寺院社会」では、中世に大きな影響力を持ちながらも、近世以降に急速に衰退したために従来は注目されてこなかった浄土宗西山派について、基礎的な史料を発見するとともに、武士や公家との関係を明らかにする。西山派は、公家・武士・他宗派の寺院とのあいだに、さまざまなネットワークを築いて、権力からの支援を獲得し、勢力を伸ばしていた。しかし、中世から近世にかけて起きた権力の大きな交替のなかで、西山派は新たな統一権力とのあいだに協力関係を結ぶことができず、衰退してゆく。中世の西山派は、強力な権力ではなく、諸権力との協力関係をテコに、徐々に社会における影響力を強めていたことが確かめられた。
 
以上、本書では、中世日本の三つの権力が、特に京都の六波羅という場所を交流の空間として密接な関係を構築していったことを明らかにしている。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 教授 高橋 慎一朗 / 2017)

本の目次

序章 「六波羅」から中世を考える
 
I  武家権力の展開
 
第一章 六波羅探題被官の使節機能
第二章 尊性法親王と寺社紛争
第三章 京都大番役と御家人の村落支配
第四章 宗尊親王期における幕府「宿老」
第五章 北条時村と嘉元の乱
第六章 『親玄僧正日記』と得宗被官
第七章 都市周縁の権力
 
II  浄土宗西山派と寺院社会
 
第一章 証空の小坂住房をめぐる一考察
第二章 往生講の展開と浄土宗西山派
第三章 如法念仏の芸能的側面
第四章 美濃立政寺に見る末寺形成の一様相
第五章 西山派と二条家の人々
第六章 禅宗長福寺の古文書に見える西山派僧
第七章 『塩尻』の西山派関連記事について
第八章 戦国期の仏陀寺再建を支えた人々
終章 武家権力と西山派