東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

石の表面の写真

書籍名

Toward the Meiji Revolution The Search for "Civilization" in Nineteenth-Century Japan

著者名

KARUBE Tadashi, Translated by David Noble

判型など

256ページ、210mmx148mm、ハードカバー

言語

英語

発行年月日

2019年3月

ISBN コード

978-4-86658-059-3

出版社

Japan Publishing Industry Foundation for Culture (JPIC)

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

The Search for "Civilization" in Nineteenth-Century Japan

英語版ページ指定

英語ページを見る

「維新革命」への道ー「文明」を求めた十九世紀日本』(新潮社・新潮選書、2017年5月) の、David Noble氏による英語訳である。ただし、翻訳の過程で原著者と翻訳者とが訳文を綿密に検討しながら作業を進めているので、両者の共著と言ってもいいだろう。海外の読者、特に英語圏の日本研究に親しんでいる読者の視線に合わせて、内容をさしかえたり、表現を改訂したりした部分も若干はある。

徳川時代から明治時代の前半に至る、十九世紀の長い時期に、日本の社会と思想に生じた変化。そのなかに、西洋の「文明」との出会いと受容もあった。その「長い革命 (long revolution)」のありさまを描こうと試みた本である。題名の「維新革命」(Meiji Revolution) は、明治時代の思想家たちがその変化を呼んだ言葉を用いている。彼ら同時代人にとっては、「王政復古」(Restoration) という政治史上の変動だけにはつきない、社会の大きな変化がすでに徳川時代から始まっており、それは「革命」と呼ぶしかない大転換であった。そこで重視されたのは、1868年の王政復古 (Meiji Restoration) ではなく、従来の身分制秩序が内部崩壊を始め、1871年の廃藩置県によって解体された過程にほかならない。

その「長い革命」は、西洋文化との出会いから本格的な受容へと至る変化を伴っていた。それは一般に「和魂洋才」と呼ばれるような、表面的な技術だけを模倣する運動ではない。当時の知識人たちは、西洋の思想のなかに、東アジアの伝統的な価値観からしても評価できる要素を見いだし、それを手がかりにして西洋文化を理解し導入しようとした。そこにはもちろん誤解も含まれてはいたが、そうした普遍的な「文明」への視線があったからこそ、日本の近代化は可能になったのである。それは、グローバル化と諸文化の衝突が並行する現代において、異なる者どうしの共存を確保するための重要なヒントにもなる、貴重な歴史経験と言えるだろう。

 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 苅部 直 / 2019)

本の目次

Introduction
CHAPTER 1: Meiji Restoration or Meiji Revolution?
CHAPTER 2: The Long Revolution
CHAPTER 3: History in Reverse
CHAPTER 4: The Voltaire of Osaka
CHAPTER 5: Is Commerce Evil?
CHAPTER 6: The Age of Economics
CHAPTER 7: Another Side of Motoori Norinaga
CHAPTER 8: A New Cosmology and the Concept of Ikioi
CHAPTER 9: Ikioi as the Motive Force of History
CHAPTER 10: A Farewell to the Hōken System
CHAPTER 11: The Advent of "Civilization"
 

関連情報

フォーラム:
(日本語訳) Reexaming Japan in Global Context Forum, Oxford, UK“Forum: Issue 014 The Meiji Ishin and Kaikoku” (グローバルな文脈での日本 / Suntory Foundation Research Project 2018年10月26日)
https://www.suntory.co.jp/sfnd/jgc/forum/014/
 

このページを読んだ人は、こんなページも見ています