
書籍名
津波被災集落の復興検証 プランナーが振り返る大槌町赤浜の復興
判型など
314ページ、A5判、並製
言語
日本語
発行年月日
2018年11月
ISBN コード
9784894913677
出版社
萌文社
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
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東日本大震災の復興の現場には、建築・土木・都市計画など、都市・地域の物的環境を専門とする多くの人々が関わった。本書は、そのような復興の現場の一つに焦点をあて、被災から今日まで変化していった復興計画の内容と、その背後にあった現場の実情を、プランナーの立場で記録することを目的としている。それは、計画当初の考えと、最終的に実現した空間との違いを確認し、復興の過程を検証することでもある。
本書の執筆者チームは、岩手県上閉伊郡大槌町の東端に位置する赤浜地区の復興の過程に携わってきた。漁村集落において浸水を免れたわずかな斜面地に建つ仮設住宅での暮らしを目の当たりにしながら、私たちは復興の現場特有の切迫感と使命感に突き動かされて活動を続けてきた。当時の有志学生も一緒だった。
その時々で力を尽くしたつもりでも、もっと良い方法があったのではないかと省みる点は少なくない。住民のみなさんが望む復興のあり方は、時間の経過とともに少しずつ変化していったが、復興計画はその変化に寄り添えていただろうか。
本書の執筆にあたって、完成したまちの姿を理路整然と説明するのではなく、住民や町役場職員のみなさんと復興のあり方を模索した日々と、その過程で得た気づきや反省を、率直に記録したいと考えた。いつ来るともわからない「次の」に直面したとき、迷いや不安、失敗を含んだ過程の記録のほうが、復興の現場を考える際の手助けになると思うからだ。
復興の現場には、今は学生の方も、地域で汗をかいて自治会をまとめていらっしゃる方も、みんな立たされることになる。そういった方に向けて執筆した。通常の研究成果とはいえないかもしれないが、私たちがそうだったように困り果てた現場を想像しながら、少しでも有益なものになるよう、議論を尽くして努力は重ねたつもりである。
地域住民の方々はもちろん、当時の町長や応援職員の皆様にも、ロングインタビューの時間をいただき、掲載している。
読者の皆様には、本書を携えて赤浜地区を訪ねていただけるとありがたい。今でも復興の取り組みは続いていること、被災前から地域における営みは続いてきたこと、局面の違いはあれどもその姿は私たちが住んでいる地域と変わらないことをご理解いただけると考えるからだ。本書で記した復興まちづくりの過程が、どのようなまちで行われてきたのか、どのような現実となっているのか、実際の風景の中に身を置いて体感してもらいたいと思う。
(紹介文執筆者: 工学系研究科 特任教授 窪田 亜矢 / 2019)
本の目次
第1章: 被災までの赤浜の空間と暮らし (萩原拓也・田中暁子)
第2章: 東日本大震災における被災状況と応急対応 (萩原拓也)
第3章: 赤浜復興計画とその策定プロセス (黒瀬武史・上條慎司)
第4章: 赤浜の復興過程の現実 (益邑明伸・新妻直人・萩原拓也)
第5章: 赤浜の復興検証と次の復興に向けて (窪田亜矢)
補 章: 大槌・赤浜の復興を振り返って
関連情報
窪田亜矢「津波後の新しいはじまりと素景 ──大槌町赤浜」 (建築討論 2018年12月1日)
https://medium.com/kenchikutouron/%E6%B4%A5%E6%B3%A2%E5%BE%8C%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%AF%E3%81%98%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%A8%E7%B4%A0%E6%99%AF-2f0bff5d4abe
書評:
平野勝也 (東北大学) 評 (『環境と公害』第48巻第4号 2019年4月号)
https://www.iwanami.co.jp/book/b454072.html
書籍紹介:
新刊紹介 (『都市問題』2019年2月号)
https://www.timr.or.jp/cgi-bin/toshi_db.cgi?mode=kangou&ymd=2019.02