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グレーの表紙にコップが倒れたイラスト

書籍名

東大式 失敗の研究 “違和感”からどう創造を生み出すか

著者名

中尾 政之

判型など

256ページ、四六判、ソフトカバー

言語

日本語

発行年月日

2018年11月

ISBN コード

978-486621-183-1

出版社

WAVE出版

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

失敗の研究

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失敗を防ぎ、創造を生むためには、ヒヤヒヤ、モヤモヤとした違和感を想起して捕捉し、そこを起点に仮説立証の思考を始めることが大事である。まずは、直観、ひらめき、天祐、気づき、違和感、などのような微弱信号をとらえることが始めの一歩である。多少、情緒的であるが、いつも周りに刺激、感動、不安、期待、などのネタを探していると、自然に微弱信号をとらえられるようになる。しかし、このプロセスでリスクやチャンスが予測できても、微弱信号だけに人間はすぐに忘れてしまう。だから、アイデアノートをいつも開いておいて、書き留めておくことが大事である。現在、IoTやAIが異常に発達するようになり、そのうち、うっかりミスはスマートセンサー付きの安全装置が防ぎ、知識はAIが教えてくれるようになる。人間がやるべきことは、「何かやろう」という意思である。意思もないのにダラダラと活動してはいけない。1週間から1ヶ月、さらに1年かけて、ゆっくりでいいから、じっくりと微弱信号の違和感を醸成し、仮説をいくつも考えておくべきである。たとえば、「夕食に何を食べようか」という課題があっても、「別に何も考えてない」「何でもOK」という素っ気ない返事では悲しい。フッと心に浮かぶ料理が、この考えるきっかけである。それをアイデアノートに記しておく。言葉でなく、絵に描いておくだけでもいいだろう。そのノートを見直せば、何か食べたくなるようなメニューを想い出すはずである。これが決まれば、レストラン、メニュー、価格、アクセス、同行者、お酒の種類、会話の内容、などの細分・具体化した設計解が、次々に設定されるはずである。ビジネスを長くやっていても、顧客と商談中に、何か売れそうな画期的なアイデアが突然浮かぶことは滅多にない。アイデアマンと呼ばれる人は、それ以前に考えておいて、脳の中にアイデアのネタを蓄積しているのである。必要なときにアイデアを思い出して棚から引き出して示すだけである。その場でせっぱつまって思いつきを述べているのではない。いつも微弱信号をとらえて考えていれば、リスクもチャンスも自分に取り込むことができる。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 中尾 政之 / 2019)

本の目次

はじめに

序  章  潜在期間にアイデアノートをつけよう
~ヒヤヒヤ・モヤモヤから創造と失敗が生まれる
 
第1章  人間は、なぜ失敗するのか?
~創造できる人と失敗する人の差
 
第2章  失敗を防ぎ、創造を生むために
~違和感をとらえるために必要なこと
 
第3章  違和感の捕捉感度を高めるメソッド
~ネガティブとマンネリを打破する
 
第4章  リスクやチャンスを予測しよう
~アイデアノートがあなたの将来を助ける
 
第5章  うっかりミスは安全装置が防ぎ、
知識はAIが手助けしてくれる
 
第6章  歴史から自説を立てることが、
仮設検証のトレーニングになる
 
終  章  21世紀に必要な仮説検証力は「勇気」と「自信」からつくられる
 
おわりに
 

関連情報

書評:
「人生を左右する大波」を予知するために、「違和感」の捕捉感度を高めよう (ライフハッカー日本版 2019年1月10日)
https://www.lifehacker.jp/2019/01/book_to_read_a_study_of_failure.html
 

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