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書籍名

アジア歴史資料の編纂と研究資源化 第5回東亜細亜史料研究編纂機関国際学術会議報告書

判型など

729ページ

言語

日本語、中国語、韓国語

発行年月日

2018年10月

ISBN コード

9784600000240

出版社

東京大学史料編纂所

学内図書館貸出状況(OPAC)

アジア歴史資料の編纂と研究資源化

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「史料編纂所って何をしているところだろう?」と思われる方は多いと思います。「前近代の日本史の研究所」、あるいは「『大日本史料』などの史料集を編纂・刊行している機関」ということをご存知の方も、では実際にどのように史料を収集・研究しているのか、史料集刊行以外にはどのような事業をおこなっているのかとなると、一般にはあまり知られていないのが実情かも知れません。
 
実は、これは史料編纂所だけの話ではなく、国内外の多くの研究機関についても言えることで、同じ歴史研究所どうしであっても、お互いの研究所の展開している事業について、あまりよくわかっていないことも多いのです。そこで史料編纂所は、本所と同じように史料集の編纂・刊行を中心に研究事業を展開している韓国の国史編纂委員会、および中国の社会科学院近代史研究所とのあいだで、2002年に交流協定を結びました。この3機関を中心に、定期的に国際学術会議を開催することで、3国の研究機関のとりくみについて情報共有し、互いに学び協力していくことを目標としています。
 
本書は、そうした趣旨にもとづき、2016年11月7・8日に本学で開催された《第5回東アジア史料研究編纂機関国際学術会議》における、全15報告をおさめたものです。「アジア歴史資料の編纂と研究資源化」を全体テーマとして、15名の報告者が、各々の所属する研究機関における最先端のとりくみを紹介しました。その内容は、史料の調査・整理、史料集の編纂、史料や研究成果の一般への公開・活用など多岐におよび、活発な討論と交流がおこなわれました。
 
会議では毎回、デジタルデータの生成・公開がひとつの大きな課題となっており、今回の会議でも3国それぞれの大型事業が紹介されました。国外からでもアクセスできるこうしたデータベースは、とてもありがたい存在なのですが、研究者であっても、みずからの専門分野でなければあまり知らないということもあり、本書はその手引きとしても活用できることでしょう。
 
前近代の日中韓3国は、話す言葉は違えども、漢字を媒体に、書物を通じて文化や歴史を共有してきました。現代の3国の研究者たちも、互いの言葉は話せずとも、同じ漢文史料を読み、歴史用語を共有しながら、研究を進めています。そんな私たちが実のある議論をするためには、たとえば英語を介したコミュニケーションはかえって遠回りになりかねません。
 
そこで本会議は3か国語の同時通訳をつけて実施し、予稿集も3か国語訳で用意しました。本書はその予稿集をもとに、加筆修正を経て完成させたものです。翻訳の過程では、本学の留学生をはじめとして、歴史研究を志す多くの若手研究者の協力を得ました。彼らの努力により、中韓の最先端のとりくみを日本語で読むことができ、また日本の研究成果を効果的に海外に発信することができました。
 
「研究所って何をするところ?」と疑問を感じておられる皆さんに、ぜひ一度、手にとっていただきたい一冊です。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 准教授 稲田 奈津子 / 2019)

本の目次

刊行の辞    保谷 徹 (東京大学史料編纂所 所長)
凡例
 
第1部 (日本語)
天皇と貴族が形成した文庫の目録学的研究の成果―デジタル画像の収集・公開と文庫の形成・再興・伝来の解明―    田島 公 (東京大学史料編纂所 教授)
朝鮮後期の王室書庫―奉謨堂を中心に―  元 昌愛 (韓国学中央研究院 蔵書閣 責任研究員)
皇室の風格―清朝宮廷遺蔵典籍の特質及び整理研究の意義―    李 士娟 (故宮博物院 図書館研究館員 善本組副組長)
奎章閣の古文書の現況と資料整理    梁 晋碩 (奎章閣韓国学研究院 学芸研究官)
清史編纂の史料準備 (出版)    卜 鍵 (国家清史編纂委員会 常務副主任)
朝鮮王朝実録の編纂と活用    李 葵理 (国史編纂委員会 編史研究士)
史料編纂所の史料収集活動について    村井 祐樹 (東京大学史料編纂所 助教)
韓国国学振興院所蔵古文献の現況と今後の課題    禹 秦雄 (韓国国学振興院 資料部研究員)
アジア歴史資料センターにおける「アジア歴史資料」のデジタル公開状況と展望    平野 宗明 (国立公文書館アジア歴史資料センター 研究員)
中国近代史档案館所蔵の黄元蔚档案にみる中日関係史料    馬 忠文 (中国社会科学院近代史研究所 中国近代史档案館館長)
在外日本関係史料の調査・収集と研究資源化の研究―日本学士院UAI関連事業との関わりで―    保谷 徹 (東京大学史料編纂所 教授)
清史編纂プロジェクト檔案文献史料のデジタル化利用と情報化構築の概況    張 鴻広 (文化部清史纂修与研究中心網絡中心 処長)
3・1運動基礎情報データベース構築事業の内容と意味    韓 亘熙 (国史編纂委員会 編史研究官)
奈良文化財研究所における情報技術を活用した史料の利活用の促進    馬場 基 (独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所都城発掘調査部主任研究員)
中国第二歴史档案館館蔵档案デジタル化及びその公開利用    曹 必宏 (中国第二歴史档案館 副館長)
 
2 (中文)
天皇与贵族家族文库的目录学研究成果―数字画像的收集、公开与文库的形成、再兴、传来的解明―    田岛 公 (东京大学史料编纂所 教授)
朝鲜后期的王室书库―以奉谟堂为中心―    元昌爱 (韩国学中央研究院 藏书阁 责任研究员)
皇家风范―清宫遗存典籍的特色及整理研究的意义―    李士娟 (故宫博物院图书馆 研究馆员 善本组副组长)
奎章阁古文书的现状与资料整理    梁晋碩 (奎章阁韩国学研究院 学艺研究官)
清史纂修的史料准备 (出版)    卜键 (国家清史编纂委员会 常务副主任)
朝鲜王朝实录之编纂与活用    李葵理 (国史编纂委员会 编史研究员)
关于史料编纂所的史料收集活动    村井祐树 (东京大学史料编纂所 助教)
韩国国学振兴院所藏古文献的现状与今后的课题    禹秦雄 (韩国国学振兴院 资料部研究员)
亚洲历史资料中心所开展的“亚洲历史资料”的电子数据化公开现状与展望    平野宗明 (国立公文书馆亚洲历史资料中心 研究员)
近代史所藏黄元蔚档案中关于中日关系的史料    马忠文 (中国社会科学院近代史研究所 中国近代史档案馆馆长)
国外所藏日本相关史料之调查、收集及研究资源化之研究―与日本学士院 UAI 相关事业之关联性―    保谷彻 (东京大学史料编纂所 教授)
清史纂修工程档案文献史料数字化利用和信息化建设简况    张鸿广 (文化部清史纂修与研究中心网络中心 处长)
3·1运动基础信息数据库构筑事业的内容与意义    韩亘熙 (国史编纂委员会 编史研究官)
活用情报信息技术以促进史料的利用与活用—奈良文化财研究所的系列活动    马场基 (独立行政法人 国立文化财机构 奈良文化财研究所都城发掘调查部 主任研究员)
中国第二历史档案馆馆藏档案数字化及其开放利用    曹必宏 (中国第二历史档案馆 副馆长)
 
3 (한국어)
천황과 귀족이 형성한 文庫의 목록학적 연구의 성과―디지털 이미지의 수집・공개와 문고의 형성・再興・전래 과정의 해명―    다지마 이사오 (田島公, 도쿄대학 사료편찬소 교수)
조선 후기 왕실의 書庫―奉謨堂을 중심으로―    원창애 (한국학중앙연구원 장서각 책임연구원)
황실의 풍격 (風格) ―청 (淸) 대 궁정 구장 (舊藏) 전적 (典籍) 의 특질과 정리연구의 의의―    리스쥐안 (李士娟, 고궁박물원 도서관연구관원 선본조 (善本組) 부조장)
규장각 고문서 현황과 자료 정리    양진석 (규장각한국학연구원 학예연구관)
청사 (淸史) 편찬의 사료 준비 (출판)    부젠 (卜键, 국가 청사 편찬위원회 상무부주임)
조선왕조실록의 편찬과 활용    이규리 (국사편찬위원회 편사연구사)
사료편찬소의 사료수집활동에 대하여    무라이 유키 (村井祐樹, 도쿄대학 사료편찬소 조교)
한국국학진흥원 소장 고문헌의 현황과 향후 과제    우진웅 (한국국학진흥원 자료부 연구원)
아시아역사자료센터의 <아시아역사자료> 디지털 공개 상황과 전망    히라노 무네아키 (平野宗明, 국립공문서관 아시아역사자료센터 연구원)
중국 근대사당안관 소장 황원울 (黃元蔚) 당안으로 보는 중일관계 사료    마중원 (马忠文, 중국사회과학원 근대사연구소 중국근대사당안관 관장)
재외 일본관계사료의 조사 및 수집과 연구 자원화의 연구―일본학사원UAI 관계사업과 관련하여―    호야 도오루 (保谷徹, 도쿄대학 사료편찬소 교수)
淸史 편찬사업 (청사공정) 에서의 당안 (檔案) 문헌사료 디지털화 이용과 정보화 작업의 개황 장홍광 (张鸿广, 문화부 청사 편수 및 연구 센터 네트워크 센터 처장)
3·1운동 기초정보 데이터베이스 구축사업의 내용과 의미    한긍희 (국사편찬위원회 편사연구관) 나라문화재연구소에서의 정보기술을 활용한 사료 이용·활용의 촉진    바바 하지메 (馬場基, 독립행정법인 국립문화재기구 나라문화재연구소  도성발굴조사부 주임연구원)
중국 제2역사당안관 (第二歷史檔案館) 관장 당안 (館藏檔案) 디지털화 및 공개이용    차오비홍 (曹必宏, 중국 제2 당안관 부관장)
 

関連情報

関連イベント:
第5回東アジア史料研究編纂機関国際学術会議の開催 (東京大学ホームページ 2016年11月16日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/t_z0206_00012.html
 

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