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カラフルな立方体の模様

書籍名

サイエンス・パレット036 地震 どのように起きるのか

著者名

纐纈 一起

判型など

146ページ、新書判

言語

日本語

発行年月日

2020年5月

ISBN コード

978-4-621-30509-6

出版社

丸善出版

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

地震

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サイエンス・パレットと呼ばれる新書版入門書シリーズは主に、オックスフォード大学出版局のVery Short Introductionsからの翻訳で構成されていますが、書き下ろしも徐々にふやされており、本書もそうした依頼に基づいて書かれた地震の入門書です。依頼をいただいた段階で、類書をいろいろ拝見してみました。わが国では地震に関することが興味を呼ぶようで、一般の方向けの入門書は多数あります。サイエンス・パレットが対象としている、専門外の大学生全般や学び直しの大人の方々向けにもいろいろなものが出されています。
 
どうしたものかと迷ってしまったので、地震以外の分野の入門書もあれこれ見ていると、『一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する』(石井俊全著、ベレ出版) が目にとまりました。出版元のウェブサイトでは「「一般相対性理論」 … (中略) … は表面的な概念だけで語れるようなものではありません。それを表現する言語は「数式」以外にないのです。」と内容紹介されていました。これだなと思って書いたものが本書です。
 
地震のおおもとは“ダブルカップル”であり、それは“メカニズム解”で表現されるというのが現代的な地震の見方です。どちらの用語もみなさんにはなじみのないものだと思います。しかし、たとえば大きな地震が起きたときに気象庁が報道発表する資料に、ビーチボールのような図面 (本書の図48 が一例) が載せられますが、これは地震による揺れの向きを用いて“ダブルカップル”を紙面上に表したものなのです。
 
つまり、地震に関する現代的な情報を理解するには、これらに代表される現代的な地震学の知識が欠かせません。ところが、一般相対性理論と同じように、それを数式なしに説明することは不可能でしたので、これまでの地震の入門書では言葉の紹介はあっても、解説にふさわしい説明がされることはありませんでした。本書は、専門外の大学生全般や学び直しの大人の方々を対象に、この説明を行いながら、地震は「どのように起きるのか」を解説するものです。
 
解説を理解していただくには物理や数学の知識が必要ですが (地震学は地学というよりは物理です)、専門外の大学生全般や学び直しの方々ならば、中学の理科や数学で履修されたものの知識はまだお持ちということを前提にして、それらについては簡単な説明にとどめました。しかし、高校や大学教養課程の物理や数学については、必要になった箇所でそれらの詳しい説明を行った上で解説を行いました。
 
巻末には、新書版入門書の通例より豊富な参考文献と索引を挙げてあります。それに加えて、本文中には、各文献に関連した部分を上付き添え字の文献番号で示し、索引の事項はゴチック体で明示しました。

 

(紹介文執筆者: 地震研究所 教授 纐纈 一起 / 2020)

本の目次

第1章 地震の基礎
地震の定義と幾何学 / 弾性体の変形とベクトル / 微分と弾性体の伸び / 弾性体のひずみと三角関数 / せん断ひずみの意味 / 弾性体にかかる力 / 応力の定義

第2章 地震の原理
はじめに / 応力のつり合い / 一般化されたフックの法則 / 運動方程式 / いろいろな積分 / 部分積分と発散定理 / 相反定理 / 表現定理

第3章 地震はどのように起きるのか
震源の発見 / 地震と断層 / プレートテクトニクス / 沈み込み帯 / 震源断層の種類 / ダブルカップルの発見 / ダブルカップルの証明 / ダブルカップルの証明 (続き) 証明のまとめ

第4章 地震の起き方を解析する
はじめに / 点力源による地震動 / 点力源による地震動 (続き) / 点震源による地震動 / 放射パターン / メカニズム解 / おわりに

参考文献
索引

関連情報

東京大学公開講座:
2019年度「東京大学公開講座:予測できる未来と、予測できない未来 纐纈一起」 (東大TV 2019年11月9日)
https://todai.tv/contents-list/2019FY/2019autumn/01
 
著者コラム:
第1回  地震の揺れとは? (NHKそなえる防災 2012年3月9日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20120302.html
 
第2回  揺れの測り方 (NHKそなえる防災 2012年7月3日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20120624.html
 
第3回  長周期地震動とは? (NHKそなえる防災 2012年10月23日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20121013.html
 
第4回  揺れによる構造物の被害 (NHKそなえる防災 2012年12月27日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20121202.html
 
第5回  揺れの予測の落とし穴 (NHKそなえる防災 2013年5月8日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20130402.html
 
第6回  長周期地震動の基礎知識 (NHKそなえる防災 2014年7月31日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20140702.html
 
第7回  長周期地震動による被害 (NHKそなえる防災 2014年10月31日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20141002.html
 
第8回  メキシコ地震の長周期地震動 (NHKそなえる防災 2015年2月27日)
https://www.nhk.or.jp/sonae/column/20141002.html
 
関連書籍:
さらに深く知りたい方は「地震動の物理学」(近代科学社) をご一読ください。https://www.kindaikagaku.co.jp/architecture/kd0544.htm

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