東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

コバルトブルーの表紙に白い卵型の模様

書籍名

平凡社新書 超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方革命

著者名

檜山 敦

判型など

224ページ、新書判

言語

日本語

発行年月日

2017年7月

ISBN コード

9784582858389

出版社

平凡社

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

超高齢社会2.0

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2030年頃から毎年100万人単位の人口減少が始まる一方で、日本の高齢化は更に進展していく。2055年になると高齢化率は40%を超える。今の社会構造のまま突入すると、ほぼひとりの現役世代がひとりのシニアを支えざるを得ない時代になるということだ。しかし、果たして日本のシニアは支えられるだけの存在であろうか? みつめ直してみると65歳以上の9割近くは自立した生活を営むことができる元気シニアであることがわかる。その事実を踏まえると、日本の高齢化の根源的問題は、定年退職後にシニアが活躍できる場を考えてこなかったことにあるといえそうだ。シニア層が活躍できる場をICT (情報通信技術) により創出することができれば、逆プラミッド型の人口構成をバーチャルに再逆転して、多数のシニア層が少数の若者を支える安定した社会構造を見出すイノベーションに繋がるかもしれない。そう考えたところから一見距離が遠いように思えるシニアとICTとを結びつける研究がスタートした。
 
加齢によりできなくなることに直面しても、ICTで乗り越えられる可能性がある。心身の健康の維持には社会との繋がりが重要とされる高齢期に、ICTは繋がる機会を拡張することができる。本書では、ひとりひとりのできる力を組み合わせるモザイク型就労の提案と、モザイクを実践する技術の研究開発と実証のあゆみをまとめた。高齢期の生き方が変われば、シニアの捉え方が変わる。そしてそれが現役世代の肩を軽くして働き方革命を加速する原動力に繋がっていく。私は、東京五輪後の持続可能な社会を見据えた青焼き図面を描くつもりで本書を届けた。出版から研究の社会実装は少しずつ広がり始めた。シニア就労への注目は高まってきてはいる。しかし五輪は終わったものの、高度成長期以来獲得した数十年の新たな人生の時間に対して、いまだ従来の一生をそのまま引き伸ばして当てはめようとしていないだろうか。
 
本書を通じて大学という学問の入り口に立った (実は何歳でも構わない) みなさんに伝えたかったことがある。それは既にある社会の型に自分を当てはめる必要はないということ。社会は人工物のひとつであるからには、ひとりひとりが思い描いた方向に社会は進んでいく。大学での時間は、よりよい社会を考える下地をつくり、いまある社会にどのように働きかけていくのか、意見の相違も踏まえてその術を学ぶ時間でもある。社会の構造は簡単には変わらない。しかし、法制度とテクノロジーと哲学が噛み合わされば、そこに新しい社会の形が見えてくる。
 

(紹介文執筆者: 先端科学技術研究センター 特任准教授 檜山 敦 / 2021)

本の目次

はじめに
 
第一章 シニア就労のススメ
 これだけ延びた平均寿命
 アクティブシニアの割合
 従来の高齢者像と異なる今の高齢者
 老後の生き方と寿命
 シニア就労のススメ
 高齢者の就労ニーズ
 就労市場で高齢者をどう位置づけるか
 
第二章 シニアの日常とICT
 柏市でのICT利用実態調査
 アクティブシニアからスマートシニアへ
 シニア情報生活アドバイザー
 ICTを学ぶことの効用──アクティブであり続けるために
 柏市での「ココナラ」ワークショップ
 クラウドソーシングサービスに参加するシニア層
 シニアのICT利用を広げるには
 シニアの日常を支援するICT
 
第三章 モザイク型就労──ICTでシニア労働力を活かす
 人口ピラミッドの再逆転
 労働者としてのシニア
 モザイク型就労
 リビングラボの活用──研究開発をイノベーションにつなげる
 時間モザイク
 空間モザイク
 スキルモザイク
 
第四章 高齢者クラウドの実用化
 高齢者就労の現在
 課題はホワイトカラーシニア層の受け皿
 ハイスキルジョブ領域から拡大する人材スカウター
 ロースキルジョブ領域から拡大するGBER
 ビジネス展開へ向けた統合プラットフォーム
 実用化を進めるための課題
 全国規模のICTインフラの整備との連携
 
第五章 未来へ向けて
 高齢者クラウドで変わる定年後のライフスタイル
 アクティブシニアとしての生き方を考える
 ジェロントロジー教育の広がり
 「一億総活躍社会」「働き方改革」にICTを
 明るい超高齢社会へ向けて
 
おわりに
あとがき
 
参照文献リスト

関連情報

特集記事:
FEATURE: Beyond Health事例「元気なシニア」をITの仕組みで生み出す (日経BP | Beyond Health 2019年9月10日)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00003/082900025/
 
FEATURES: 超高齢社会のジョブマッチング - シニア就労をアプリで支える (東京大学ホームページ 2018年9月14日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z0508_00004.html
 
著者インタビュー:
ビジョナリーの声を聴け: ICTでシニアの働き方を支援する「GBER」シニアと現役世代が支え合う 「モザイク型就労」の実現へ (みんなの介護 2021年11月30日)
https://www.minnanokaigo.com/news/visionary/no65/
 
これまでにない「ベテラン人材のマッチング」 ベテラン人材の流動化が日本に活力を取り戻す (東洋経済ONLINE 2021年8月30日)
https://toyokeizai.net/articles/-/447967
 
シニアも若者も「働く人の幸せ」を実現するためのテクノロジー (THE ADECCO GROUPホームページ 2019年10月23日)
https://www.adeccogroup.jp/power-of-work/133
 
Smarter Business: 超高齢社会の就労支援「高齢者クラウド」が、日本の労働市場を変革する (IBMホームページ 2019年5月20日)
https://www.ibm.com/blogs/smarter-business/business/technologies-for-aging02
 
あの人のスマートワークが知りたい! − 第13回: 東京大学先端科学技術研究センター講師の檜山敦氏に聞く―シニアの労働が若者のライフワークバランスを支える社会へ (スマートワーク総研 2017年12月14日)
https://swri.jp/article/370
 
著者コラム:
新連載: AI・ICTで働き方が変わる―高齢者から始まる働き方改革 (『エルダー』 2019年11月号)
https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_201911/html5.html#page=47
 
総選挙後の課題、シニアの労働参加はAIがカギ - 断片的な時間や能力を統合 若者を支えられる社会作りを (『日経ビジネス』 2017年8月21日号)
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/101700172/102000001/
 
書評:
「高齢者が若者を支える社会を作ればいい」という逆転の発想
~『超高齢社会2.0』(檜山 敦 著)を読む (DIAMOND Online 2017年8月19日)
https://diamond.jp/articles/-/139065
 
BOOKウォッチ: 夕刊フジの書評から (J-CAST 2017年8月4日)
https://books.j-cast.com/book029/2017/08/04005848.html
 
書籍紹介:
『超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方革命』想定外の長生きは、災厄にすぎないのか? (じんぶん堂/好書好日 2020年1月31日)
https://book.asahi.com/jinbun/article/13085226
 
2017年12月の新着図書紹介 (独立行政法人労働政策研究・研修機構 2017年12月)
https://www.jil.go.jp/lib/tayori/2017/201712/index.html
 
講演・セミナー:
第133回 (2021年秋季) 東京大学公開講座「繋がる」
DAY 1: すべての人が繋がる (2021年10月30日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/publiclectures/archive.html
https://www.u-tokyo.ac.jp/publiclectures/133.html

高齢者就労支援セミナー: 100年の一生を豊かにする 新しい生き方、働き方~GBER熊本版の挑戦~ (熊本県生涯現役促進地域連携協議会 2021年10月27日)
https://kumamoto-aca.com/2021/wp-content/uploads/2021/10/aab50f504351f07568f64c4946e1fce6.pdf
 
UTSSI×IOG合同シンポジウム開催「超高齢社会を支える 産業創出に向けた産学連携の推進」 (東京大学スポーツ先端科学連携研究機構 (UTSSI)、東京大学高齢社会総合研究機構 (IOG) 2021年7月19日)
https://www.iog.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2022/06/20210719UTSSI.pdf
 
第六回シンポジウム 生涯現役社会の実現を考えるシンポジウム (公益財団法人 前川ヒトづくり財団 2020年5月20日)
http://mfh.or.jp/forum/img/2020forum.pdf
 
第49回フミコムcafé-online: 超高齢社会をテクノロジーでチャンスに変える! (地域連携ステーション フミコム 2020年4月22日)
https://www.d-fumi.com/application/files/8115/8518/8256/202004_49_cafe.pdf
 
基調講演 | 令和元年度 高齢社会フォーラム報告書「高齢社会フォーラム in 東京」 (内閣府 2020年1月20日)
https://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/r01forum/tokyo_2.html
 
多様な働き方推進セミナー: ダイバーシティが企業を支える 新たな社会モデルの構築 (熊本県・熊本県生涯現役促進地域連携協議会 2019年11月19日)
https://www.kumamoto-kaigo.jp/news/notice/wp-content/uploads/sites/2/2019/11/%e3%82%bb%e3%83%9f%e3%83%8a%e3%83%bc%ef%bc%91%ef%bc%91%e6%9c%8819%e6%97%a5%e9%96%8b%e5%82%ac%e5%91%8a%e7%9f%a5_191030.pdf
 
つながりが切り拓く未来#01テクノロジー×シニア 変わる僕たちの働き方 (日本経済新聞社 | COMEMO運営事務局 2019年3月26日)
https://eventregist.com/e/comemo0326career
 
いきがい就労推進セミナー: 人生100年時代の新しい生き方、働き方~GBER熊本版の挑戦~ (熊本県生涯現役促進地域連携協議会 2019年3月8日)
https://www.kumamoto-sjc.jp/pdf/20190308s.pdf
 
「先端研×地方創生セミナー」リポート(2) クラウドやAIを活用したシニア雇用のマッチング、柏市などで実証 (新・公民連携最前線PPPまちづくり 2017年7月20日)
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/report/070900057/
 
関連情報:
書籍『超高齢者社会2.0 クラウド時代の働き方革命』(檜山敦 著) にサーキュレーションが取り上げられました (CIRCULATIONホームページ 2017年11月16日)
https://circu.co.jp/news/20171116-354/
 

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