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書籍名

資料と問いから考える歴史総合 深い学びへの授業モデル

著者名

高校歴史教育研究会 (編)、岩井 淳、岡田 健、 川喜田 敦子、 君島 和彦、木村 茂光、戸川 点、日髙 智彦、茂木 敏夫、安井 崇、油井 大三郎 (著)

判型など

224ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2022年3月

ISBN コード

978-4-8343-2104-3

出版社

浜島書店

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2022年度から高等学校の歴史分野の必修科目として「歴史総合」が新設された。「歴史総合」の特徴は、近現代の日本史と世界史を統合した内容を扱うこと、従来のような通史型ではなくテーマ史型の構成をとることにある。歴史総合の授業は、「歴史とは何か」「資料とは何か」「歴史に対してどう問いを立てるか」などを学ぶ「歴史の扉」と、「近代化」、「国際秩序の変化や大衆化」「グローバル化」という3つのキーワードを軸に歴史をとらえるテーマ史的な部分をあわせて全体で4つのパートからなる。テーマ史の部分では、生徒が資料を読み取る技能を身につけ、歴史に対する自分の関心を「問い」として表現すること、学んだ知識に基づいて事象を比較し関連づけて考察すること、歴史の学びを現代の諸課題に向き合う上でどう生かすかを実践から学ぶことが目指される。
 
歴史的思考力の向上を重要な目標として掲げる歴史総合では、資料に基づいて歴史的思考を展開することに重きが置かれる。しかし、歴史総合の授業が想定するような数の資料を準備するにはいったいどれだけの時間が必要になるだろうか。本書は、現場の教員の助けになるように、毎回の授業で使える資料をまとめた資料集である。授業に必要な資料が本書一冊ですべて揃うように多数の資料が提示されており、文字資料、図像資料、グラフ、表など、使いやすい資料を選んでお使いいただけるように工夫されている。また、資料は学習指導要領および学習指導要領解説に準拠して選定してあるため、授業モデル集としてそのまま授業に使うこともできる構成になっている。
 
授業で取り上げる資料は、教科書・資料集などの生徒用教材、歴史学の専門の史料集など、どこから探してきてもよい。とはいえ、授業では生の資料をそのまま使えるわけではない。歴史総合の授業で想定されているように生徒が資料を読み解く場合には、ひとつの資料を段階を追って読み解いていくための手引きとなるような問いが必要になる。本書では、すべての資料に読み解きの手がかりとなる問いが付されており、それらの問いを授業で使うときの便宜を考えて答えも示してある。資料と問いは授業でそのまま使うこともできるし、背景情報とあわせて自由にアレンジして使うこともできる。
 
歴史総合の導入は日本の歴史教育にとって大きな転換を意味する。知識偏重の教育から歴史的思考力の向上を目指す歴史教育へ、教師からの一方通行ではなく生徒の主体性を重視した双方向型の授業へという発想に共感を覚える人は多いだろう。他方で、実際に授業を組み立てようとしたときに、従来の授業とのあまりに大きな違いに途方に暮れる教員も多いのではないだろうか。歴史総合の理念を生かした授業を実践したいと考える教員に本書が少しでも役立つことを願っている。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 川喜田 敦子 / 2022)

本の目次

第1編 歴史の扉
    序 章 18世紀以前の世界
    第1章 歴史と私たち
    第2章 歴史の特質と資料

第2編 近代化と私たち
    第1章 近代化への問い
    第2章 結び付く世界と日本の開国
    第3章 国民国家と明治維新
    第4章 近代化と現代的な諸課題
 
第3編 国際秩序の変化や大衆化と私たち
    第1章 国際秩序の変化や大衆化への問い
    第2章 第一次世界大戦と大衆社会
    第3章 経済危機と第二次世界大戦
    第4章 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題
 
第4編 グローバル化と私たち
    第1章 グローバル化への問い
    第2章 冷戦と世界経済
    第3章 世界秩序の変容と日本
    第4章 現代的な諸課題の形成と展望
    終 章 「歴史総合」の振り返りから「日本史探究」「世界史探究」へ
 

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