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ラファエロ作、アテネの学堂の絵画

書籍名

詳説世界史研究

著者名

木村 靖二、岸本 美緒、小松 久男 (編)

判型など

576ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2017年12月

ISBN コード

978-4-634-03088-6

出版社

山川出版社

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詳説世界史研究

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高校世界史教科書としてもっとも定評の高い山川出版社の『詳説世界史』(現行世界史B) に準拠して、さらに内容を深く掘り下げ叙述した世界通史。受験参考書としてのみならず、最近では一般教養書としての評価も高い。世界史をより深く学ぶために必読の書である。
 
これまで親しまれてきたロングセラー『詳説世界史研究』を、あらたな執筆陣によって全面的に書き改めた2017年版。近年の目覚ましい歴史学研究の新成果にもとづいて、豊富なコラムと図版を用い、学問的な正確さとわかりやすい叙述を目指して書かれたのが本書の特色である。詳しい通史がペーパーバック一冊にまとまっている点が他の類書にはない特徴であるといえる。受験生にはもちろん、一般社会人の需要にもこたえた信頼に足る世界通史である。
 
序章「先史の世界」で人類の進化と文明の成立について述べたのち、第I部ではオリエント・地中海・南アジア・東アジアなどでそれぞれ地域世界が成立するまでの「古代」を扱う。オリエント文明の影響を受けて地中海に成立したギリシア・ローマ世界は、その後のヨーロッパ世界成立の母体となったが、一方で東アジアでは整然とした国家制度が特徴である中華帝国が誕生する。その他ユーラシア大陸に誕生した東南アジア世界、内陸アジア世界、インド世界の成り立ちについても叙述される。
 
第II部では5~16世紀にかけてユーラシアの各地に成立したいくつかの歴史的世界を概観する。イスラーム世界の成立とヨーロッパ中世世界の成立は、その後の世界史の方向性を定める役割を果たした。
 
第III部では16~19世紀までの近代世界を扱う。ルネサンス、宗教改革とともに幕開けした大航海時代を皮切りに、それまで世界の辺境にあった西ヨーロッパ世界が拡大を開始し、「世界の一体化」が実現してゆく過程を扱う。
 
第IV部では、帝国主義による世界分割の果てに2度の世界大戦が起こり、その後現代世界がどのような経過をたどって今日にいたっているかを叙述する。
 
古代文明から各地域世界が誕生し、それらの交流と変容をへて近代世界システムが地球上に出現したのち、さまざまな矛盾や問題を生み出しながら今日の世界を形成してゆく流れを、最新の歴史学の研究動向に基づきながら描いたバランスの取れた通史である。随所にカラー図版を豊富に用い、また正規の教科書では扱わないが発展的な理解の助けになるトピックを、多くのコラムにおいて取り上げている。巻末に章ごとの詳しい読書案内と索引を付す。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 橋場 弦 / 2021)

本の目次

序章 先史の世界

第I部
 第1章 オリエントと地中海世界
  1.古代オリエント世界
  2.ギリシア世界
  3.ローマ世界

 第2章 アジア・アメリカの古代文明
  1.インドの古典文明
  2.東南アジアの諸文明
  3.中国の古典文明
  4 南北アメリカ文明

 第3章 内陸アジア世界・東アジア世界の形成
  1.草原の遊牧民とオアシスの定住民
  2.北方民族の活動と中国の分裂
  3.東アジア文化圏の形成

第II部
 第4章 イスラーム世界の形成と発展
  1.イスラーム世界の形成
  2.イスラーム世界の発展
  3.インド・東南アジア・アフリカのイスラーム化
  4.イスラーム文明の発展

 第5章 ヨーロッパ世界の形成と発展
  1.西ヨーロッパ世界の成立
  2.東ヨーロッパ世界の成立
  3.西ヨーロッパ中世世界の変容
  4.西ヨーロッパの中世文化

 第6章 内陸アジア世界・東アジア世界の展開
  1.トルコ化とイスラーム化の進展
  2.東アジア諸地域の自立化
  3.モンゴルの大帝国

第III部
 第7章 アジア諸地域の繁栄
  1.東アジア世界の動向
  2.清代の中国と隣接諸地域
  3.トルコ・イラン世界の展開
  4.ムガル帝国の興隆と東南アジア交易の発展

 第8章 近世ヨーロッパ世界の形成
  1.ヨーロッパ世界の拡大
  2.ルネサンス
  3.宗教改革
  4.ヨーロッパ諸国の抗争と主権国家体制の形成

 第9章 近世ヨーロッパ世界の展開
  1.重商主義と啓蒙専制主義
  2.ヨーロッパ諸国の海外進出
  3.17~18世紀のヨーロッパの文化と社会

 第10章 近代ヨーロッパ・アメリカ世界の成立
  1.産業革命
  2.アメリカ独立革命
  3.フランス革命とナポレオン

 第11章 欧米における近代国民国家の発展
  1.ウィーン体制の成立
  2.ヨーロッパの再編と新統一国家の誕生
  3.南北アメリカの発展
  4.19世紀欧米の文化

 第12章 アジア諸地域の動揺
  1.オスマン帝国支配の動揺と西アジア地域の変容
  2.南アジア・東南アジアの植民地化
  3.東アジアの激動

第IV部
 第13章 帝国主義とアジアの民族運動
  1.帝国主義と列強の展開
  2.世界分割と列強対立 
      3.アジア諸国の改革と民族運動
 
 第14章 二つの世界大戦
      1. 第一次世界大戦とロシア革命
      2. ヴェルサイユ体制下の欧米諸国
      3. アジア・アフリカ地域の民族運動
      4. 世界恐慌とファシズム諸国の侵略
      5. 第二次世界大戦

 第15章 冷戦と第三世界の独立
      1. 戦後世界秩序の形成とアジア諸地域の独立
      2. 米ソ冷戦の激化と西欧・日本の経済復興
      3. 第三世界の台頭と米ソの歩み寄り
      4. 石油危機と世界経済の再編

 第16章 現在の世界
      1. 社会主義世界の変容とグローバリゼーションの進展
      2. 途上国の発展と独裁政権の動揺
      3. 地域紛争の激化 

読書案内
索引
 

関連情報

書籍紹介:
詳説世界史研究の特長とおすすめの使い方 (合格サプリ 2021年6月21日)
https://goukaku-suppli.com/archives/61413
 
詳説世界史研究の使い方・勉強法を論述対策に利用していた東大生が徹底解説! (武田塾ホームページ 2018年12月15日)
https://takeda-goukaku.com/column/5610/
 
東大生が厳選「世界史が好き&得意になる」3冊 (東洋経済ONLINE 2018年7月7日)
https://toyokeizai.net/articles/-/227905?page=2

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