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薄ピンクの表紙

書籍名

国際交通論 政策・産業とその展望

判型など

296ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2022年3月17日

ISBN コード

978-4-13-072009-0

出版社

東京大学出版社

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国際交通論

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本書は、2014年度より公共政策大学院で開講している講義「国際交通政策」のこれまでのテーマの中から、特に基本的で重要と考えられるものをまとめたものです。講義で実際に講師をつとめた産官学の方に執筆頂き、公共政策大学院交通・観光政策研究ユニット (TTPU) に所属する宿利客員教授と軸丸が編者をつとめました。
 
この講義は、航空や海運などヒトやモノの国際的な輸送や、鉄道など日本の交通産業・インフラが持つ技術やノウハウの国際的な関わりについて、その政策と産業の実態をよく見極め、日本の国際交通政策のあり方を考察することをねらいとして開講しています。講義は、国際交通の各分野で政策や経営の判断を行い、各分野を俯瞰できる行政官や企業のトップ、第一人者の研究者をゲストスピーカーに招き、オムニバス形式で展開し、毎回、講義とともに、それぞれのテーマについて講師と受講生のディスカッションを行っています。
 
本書の特徴と考えられる点を幾つか挙げます。第一に、産官学の第一線の方がそれぞれの立場で国際交通を論じ、全体として今日の国際交通の実態を理解できるようにしています。国際交通に関して産学官協同のこうした成果物は類例がこれまでほとんどありません。特に、本書の副題に「政策・産業」と示すように、「国際交通政策」の考察に当たっては、運輸・交通分野で実際のサービスの担い手である産業の経営判断・戦略が重要な要素であるため、企業の経営者の議論は本書で大きな比重を占めています。第二に、実際にヒトやモノの国際輸送を行う海運や航空に範囲を限定せず、鉄道のように日本の持つ質の高い技術やノウハウの海外展開を行うことも国際交通政策の大きな柱の一つとしています。人口減少下の日本では、多くの産業の海外展開が成長戦略の一環として注目されており、その中で、交通インフラの海外展開は中核的な分野と位置付けられています。本書では、交通インフラの海外展開の意義、現状、課題、展望などの議論を深めるための多くの手掛かりを示しています。第三に、本書は、「国内交通」にも多くのページを割いています。これは、第二の点とも関係しますが、グローバル化が益々進む中、様々な政策や経営戦略・事業が国内外の双方に関係するようになり、国際交通政策においても考察の範疇が広がっていることの表れと言えます。
 
多くの方が本書を読んで頂き、まず、日本の交通・運輸の実態を理解し、国際交通政策を巡る議論が深まり、活性化される一助になることを願っています。また、今後日本や世界を舞台に活躍していく学生の皆さんをはじめ、読者の方が、国際交通に関する考察を通じて、日本の持つ「強み」や、あるいは「弱み」「課題」の認識も深め、有益な知見や視点を得ることができれば幸いです。

 

(紹介文執筆者: 公共政策大学院 特任教授 軸丸 真二 / 2022)

本の目次

はじめに 
 
第I部 国際交通総論
 
第1章  日本の国際交通政策-交通政策基本法・交通政策基本計画を中心に
国土交通省国土交通審議官 藤井直樹
 
第2章  ネットワーク産業と経済学
東京大学公共政策大学院長/東京大学大学院経済学研究科教授 大橋 弘
 
第II部 ヒトとモノの国際輸送
 
第3章 航空政策・空港・航空事業
3.1 航空政策を巡る環境変化と今後の課題
観光庁長官 和田浩一
3.2 空港のこれまでとこれから-ポストコロナ時代に空港が果たすべき役割
成田国際空港(株)代表取締役社長 田村明比古
3.3 空港経営改革
国土交通省鉄道局次長 鶴田浩久/ 福岡国際空港(株)代表取締役社長 永竿哲哉
3.4 これからの航空事業1-航空事業モデルの変革
全日本空輸(株)代表取締役社長 平子裕志
3.5 これからの航空事業2-経営破綻を乗り越え持続可能な成長へ
日本航空(株)常務執行役員旅客営業本部長 西尾忠男
 
第4章 物流政策・海運・港湾・国際複合一貫輸送
4.1 これからの国際物流政策-総合物流施策大綱 (2021~2025年度) を中心に
国土交通省航空局長 久保田雅晴
4.2 日本の外航海運のダイナミズムと今後の展望―定期船事業を核にして
日本郵船(株)取締役会長 内藤忠顕
4.3 日本の港湾政策の現状と今後の展望
国土交通省大臣官房技術総括審議官 髙田昌行
4.4 フォワーダーとグローバルロジスティックス
日本通運(株)特別参与 伊藤 豊
 
第III部 交通関係の事業・インフラ・技術の海外展開
 
第5章 鉄道事業の変革と鉄道システムの海外展開
5.1 国鉄改革と JR-東海道新幹線から超電導リニアへ
東海旅客鉄道(株)名誉会長 葛󠄀西敬之
5.2 これからの鉄道事業-ポストコロナの時代に
東日本旅客鉄道(株)取締役会長 冨田哲郎
5.3 アジアの大都市の鉄道整備
政策研究大学院大学客員教授 森地茂
5.4 総合鉄道メーカーのグローバル事業への挑戦 
(株)日立製作所執行役常務 光冨眞哉
 
第6章 日本の交通インフラの海外展開
国土交通省国土交通審議官 藤井直樹
 
おわりに
 

関連情報

東京大学公共政策大学院交通・観光政策研究ユニット (TTPU)
https://www.pp.u-tokyo.ac.jp/TTPU/
 
書評:
加藤一誠 (慶應義塾大学商学部教授) 評 (『高速道路と自動車』第65巻第9号 2022年9月)
https://www.express-highway.or.jp/books/document/mokuji_2209.pdf
 
セミナー:
第3回TTPUセミナー「日本の鉄道システムの海外展開を考える~150年の実績に基づくサステイナブルな発展への貢献~」 (東京大学公共政策大学院 交通・観光政策研究ユニット (TTPU) 2022年2月28日)
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/en/news/2022-03-02-33939/

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