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公共交通機関のイラスト

書籍名

地域公共交通政策論

判型など

260ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2021年4月20日

ISBN コード

978-4-13-042152-2

出版社

東京大学出版社

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地域公共交通政策論

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地域公共交通は、地域の維持存続・発展に必要不可欠な経済・社会基盤です。日本では、この重要な社会インフラを基本的には民間企業に委ねてきました。民間の企業経営によって地域公共交通を成り立たせる形態は、欧米諸国では見られない日本独自のものです。これは、日本の国土の可住地面積が狭い中、高度経済成長期までは、人口が増大し、経済が成長していたため、効率的な旅客の輸送が可能であり、地域公共交通が商業ベースで成立していたことによります。しかし、その後のマイカーの急速な普及や、人口減少、高齢化、大都市への人口集中等により、地域公共交通企業の経営が著しく悪化し、今日では、地域公共交通サービスを一定の水準に確保することが困難な地域が全国に拡大していることは、学生の皆さんもよく耳にしていると思います。
 
本書は、東京大学公共政策大学院でA1A2タームに開講している授業「地域交通政策研究」でとりあげた施策や具体的な取組み事例を、授業で実際に講師を務めていただいた方々に、各テーマごとにわかりやすく解説していただいたものです。この授業は、鉄道、バス、旅客船など地域公共交通を担う交通事業者、行政当局者 (国、地方公共団体) や研究者を教室にお招きし、オムニバス形式により実施されています。毎回、各講師の強い思いと熱のこもった講義が行われ、その後、講師と多様な研究科の学生との間で活発なディスカッションが展開されるのが特徴です。また、毎年、施策や事例の実際の現場を見学・体感した上で、講師や地元の関係者と議論や意見交換を行い、学生の理解や考察を深める現地視察・授業の回も設けています。
 
地域公共交通が前述のように危機的状況に直面する中、この十数年来、市町村を中心とした地域の総意による地域公共交通の維持・確保・改善の取組みを後押しする法制度や支援制度が整備され、各地で地域一体となった取組みが進みつつあります。しかし、全国の各地で抱える交通の課題とその対応策は一様ではなく、また、このような取組みの歴史が比較的浅く、全国的な広がりに欠け、未だ成功事例は限定的という状況です。
 
こうした状況の中、本書では、全国の事例の中から、地元関係者または交通事業者による優れた取り組みによって確かな成果を実現しており、かつ、その取組みが一定の持続可能性を有すると評価できるものを採り上げています。これらの事例は他の地域にも政策展開が期待できる事例であり、地域公共交通政策について関心を持ち、学び、研究し、あるいは当事者として担当される方々の一助になると確信しています。
 
最後に、読者の皆さんには、本書に登場する様々な事例が有する普遍的な意義や価値について、よく理解していただくともに、地域公共交通を考える上では総合的な観点が不可欠であるということに十分留意して、ぜひ多面的な考察を深めていただきたいと思っています。
 

(紹介文執筆者: 公共政策大学院 客員教授 宿利 正史 / 2023)

本の目次

(執筆者の所属・肩書は執筆時点のもの)
 
はじめに 
東京大学公共政策大学院客員教授 宿利正史
 
第I部 総論
 
第1章  地域交通政策を巡る状況
  元国土交通省総合政策局公共政策部長 城福健陽
 
第2章  公共交通の再生からデザインする「地域づくり」
  福島大学経済経営学類准教授 吉田 樹
 
第II部 地域交通政策各論
 
第3章 地域の持続的発展と交通
  3.1 サステナブルな地域公共交通-各地における実証と解決法
   両備グループ代表兼CEO 小嶋光信
  3.2 総合的な交通政策の実践-海の京都の観光まちづくり
   元京都府交通基盤整備推進監 村尾俊道
  3.3 路面電車と松山の観光・まちづくり
   (株) 伊予鉄グループ代表取締役社長 清水一郎
 
第4章 地域の自動車交通
  4.1 公共交通としてのバスの存在意義とイノベーションの波
   (株) みちのりホールディングス代表取締役グループCEO 松本 順
  4.2 見える化と地域おこしによる交通まちづくり
   イーグルバス (株) 代表取締役社長 谷島 賢
  4.3 タクシー車両を活用したデマンド交通
   三条市総務部行政課長 小林和幸
  4.4 ふる里の暮らしを支える公共交通
   八女市副市長 松尾一秋
  4.5 過疎地域とバスによる文化づくり
   宍粟市まちづくり推進部次長 樽本勝弘
  補論 井笠鉄道の経営破綻と交通行政
   元国土交通省中国運輸局自動車交通部長 小畠博文
 
第5章 地域の鉄道
  5.1 地域社会における鉄道の役割
   えちぜん鉄道 (株) 専務取締役兼管理部長 伊東尋志
  5.2 LRTの導入とコンパクトシティ
   富山市活力都市創造部路面電車推進課指導官 谷口博司
  5.3 地域の交通を持続的に維持するために
   北海道キヨスク (株) 代表取締役社長 小山俊幸
  5.4 東日本大震災からの鉄道の復旧
   国土交通省鉄道局技術企画課長 岸谷克己
  補論 大規模災害時の地域交通行政
   元国土交通省東北運輸局総務部長 菊池憲満
 
第6章 離島航路の再編と観光振興
  薩摩川内市商工観光部交通貿易課長 有馬眞二郎
  国土交通省九州運輸局下関海事事務所長 薄墨徳光
 
第7章 リージョナル航空と地方創生
  (株) フジドリームエアラインズ代表取締役 鈴木与平
 
おわりに
東京大学公共政策大学院特任教授 長谷知治

関連情報

TTPU – 交通・観光政策研究ユニット (東京大学公共政策大学院)
https://www.pp.u-tokyo.ac.jp/TTPU/
 
著者インタビュー:
著者に聞く (『時評』 2021年8月号)
https://www.jihyo.co.jp/publish/jihyo/826002e23b07d82a52cb3b4e06e1b588b4fad8d8.html
 
書籍紹介:
人口減、岐路の地域交通
まちづくり視点で再設計 関西大学教授 宇都宮浄人 (『日本経済新聞』 2022年10月22日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65333220R21C22A0MY6000/
 

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