
書籍名
日本史の現在 2 古代
判型など
328ページ、四六判
言語
日本語
発行年月日
2024年5月24日
ISBN コード
978-4-634-59139-4
出版社
山川出版社
出版社URL
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高等学校で使われている歴史教科書の背後には、膨大な研究がある。本書は、歴史教科書の叙述の変化などを手がかりに、どのように研究が進んでいるか、日本史研究の現状を知ってもらえればと企画されたものである。教科書の文章の裏付けとなっている、あるいは行間から読み取ってほしい、研究の積み重ねと進展を、それぞれのテーマごとにベテランの研究者から若手の研究者に分担してわかりやすく記してもらった。各章はそれほど長くはないので、一般教養として前期学生向けの読物としても、また日本史の研究をしてみようと考えている学生の入門用の研究史整理としても役に立つのではないかと思う。各章は独立しているのでどこからでも興味のあるところから読んでいただければ幸いである。
20のテーマは基本的に現在の教科書に沿って選び、倭の五王や帰化人などオーソドックスなテーマをとりあげてもらったが、「天皇と貴族」「在地首長制論」など少し大きいテーマで論じてもらったものもある。また普通には教科書で取り上げられないものとして、『日本書紀』の成立と記紀神話についてとりあげた。かつて戦前の国定教科書では、『日本書紀』の叙述を歴史とし、神武天皇以来の万世一系が述べられ、アマテラス以来の神話も記されていた。現在でもこうしたあり方の復活をめざす勢力もあり、「日本の建国伝承」として取り上げ、崇神天皇を実在すると記す教科書もあるのだが、多くの教科書になぜそうした叙述がなく、記紀神話がどのような性格か、知っておくことは必要だろう。また伝統的な文献史学だけでなく、平城宮・京から出土した木簡や地方官衙の発掘の歴史研究上の意義についてもそれぞれの専門家にふれてもらった。遣唐使や正倉院宝物、唐風文化などをとりあげ、広くアジアの中で唐文明の受容と国際交流を考えたことも特色であろう。10世紀以降の摂関期については受領の国家支配上の役割について丁寧に整理し、近年の教科書叙述の変化にふれているほか、さらに摂関期の政治のあり方や官司制についてとりあげた。教科書には「陣定」が記されるくらいでほぼ叙述がないテーマだが、これではこの時代の国家のイメージが得られない。古代史研究の進展がまったく教科書に反映されていない分野として、あえて記してもらった。
編者としては、冒頭で天皇号と日本国号について古代国家の形成と対外交渉の中で成立したことを論じたほか、「おわりに」で、本論でふれられなかった聖徳太子をどう位置づけるかについて研究史の現状と問題点を簡単にまとめた。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 大津 透 / 2025)
本の目次
2 倭の五王と遣隋使 (榎本淳一)
3 帰化人―日本古代の移民―の果たした役割 (丸山裕美子)
4 『日本書紀』の成立とその信憑性 (細井浩志)
5 記紀神話と古代の祭祀 (小倉慈司)
6 在地首長制論―古代国家の地方支配と郡司 (磐下 徹)
7 大化改新論―再評価の立場から (市 大樹)
8 天皇と貴族―古代国家の支配者集団 (武井紀子)
9 調庸制と班田制 (神戸航介)
10 平城木簡は何を語るか (山本祥隆)
11 地方官衙の発掘と地方社会 (浅野啓介)
12 墾田永世私財法と初期荘園 (北村安裕)
13 蝦夷とは何か (大高広和)
14 遣唐使の役割と変遷 (吉永匡史)
15 正倉院宝物と天平文化 (佐々田悠)
16 儀礼の整備と唐風文化 (稲田奈津子)
17 摂政・関白と幼帝の登場 (神谷正昌)
18 摂関期の政務 (黒須友里江)
19 受領の支配と貢納 (三谷芳幸)
20 摂関・院政期の官司制 (今 正秀)
おわりに―付、聖徳太子をめぐって (大津 透)
関連情報
大髙広和先生「蝦夷とは何か」(『日本史の現在2 古代』2024) (大正大学ホームページ 2024年5月30日)
https://www.tais.ac.jp/faculty/department/japanese_history/blog/20240530/87290/

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