ベイズデータ解析 第3版

『ベイズデータ解析 (第3版)』は、ベイズ統計学を用いたデータ分析の解説書として世界的に有名なテキストである「Bayesian Data Analysis」の第3版の日本語訳であり、現代の統計学やデータサイエンスにおいて重要な役割を果たすベイズ統計学の理論とそのデータ分析への応用方法を、体系的かつ包括的に学ぶことができる書籍です。本書は、学部教養程度の数理統計学の基礎知識を一通り身に付けた後にベイズ統計学を初めて学ぶ人から、ベイズ統計学のより深い理解と実践的スキルを求める研究者やデータサイエンティストまで幅広い読者層を対象としています。
 
本書の第I部はベイズ統計学の基礎的な考え方から解説が始まります。特にベイズ統計学の基本となるベイズの定理を軸に、事前確率や事後確率といった重要な概念を詳しく解説し、ベイズ統計学と対となるデータ分析の枠組みである頻度主義的な統計学との違いを明確にしています。このアプローチにより、データに基づいた推論や予測がベイズ統計の枠組みでどのように行われるのか、その理論的背景を学ぶことができるようになっています。
 
第II部以降では具体的なデータ分析例を通じて、ベイズ統計学がどのように現実のデータ解析に応用されるかが解説されています。具体的には線形回帰モデルや一般化線形モデル、階層ベイズモデルなど、ベイズ統計学を用いたデータ分析において主要なモデルが紹介されており、これらのモデルをどのように実際のデータに適用し、分析結果を解釈すればよいかという点について理解を深めることができます。また、マルコフ連鎖モンテカルロ法や変分推論といったベイズ統計分析の手法を計算機上で実装する際の方法も詳しく解説されており、これらの方法が様々なモデルの推定においてどのように利用されるかを学ぶことができます。
 
さらに本書の特色として、RやStanといった統計ソフトウェアを使用した具体的なコード例が豊富に掲載されている点が挙げられます。これにより、読者は単に理論を学ぶだけでなく、実際にデータを解析し、ベイズ統計の手法を実践的に使いこなすスキルを身につけることができるようになっています。また演習問題やケーススタディも豊富に用意されており、これらを通じて読者はデータ分析における実践的な問題解決能力を養うことができるような構成になっています。
 
ベイズ統計学とその考え方を用いたデータ分析は自然科学から人文・社会科学まで、さまざまな分野で応用が進んでいます。実際、本書では様々な分野への具体的な応用例が取り上げられており、ベイズ統計が現実世界の問題解決にどのように役立てられるかを実感できる内容となっています。
 

(紹介文執筆者: 空間情報科学研究センター 准教授 栗栖 大輔 / 2024)