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黄色と白の表紙

書籍名

SpringerBriefs in Statistics (JSS Research Series in Statistics) Mixed-Effects Models and Small Area Estimation

判型など

121ページ、並製

言語

英語

発行年月日

2023年2月4日

ISBN コード

978-981-19-9485-2

出版社

Springer Singapore

出版社URL

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学内図書館貸出状況(OPAC)

Mixed-Effects Models and Small Area Estimation

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本書は、混合効果モデルと小地域推定の技術的な側面について自己完結型な導入を提供しています。特に、古典的な理論の紹介と最新の手法のレビューに焦点を当てています。最初に、混合効果モデルにおけるパラメータ推定、ランダム効果の予測、変数選択、漸近理論など基本的な問題について紹介します。その後、小地域推定で使われる標準的な混合効果モデルであるFay-Herriotモデルと枝分かれ誤差回帰モデルを紹介し、頻度論的およびベイズ的アプローチによる小地域推定法を紹介します。その小地域推定法の不確実性を測定するために、平均二乗誤差や信頼区間を計算するための方法について議論します。頻度論からベイズまで、混合効果モデルを使用したさまざまな高度な手法が紹介されており、データ解析のスキルや数理統計が必要なさまざまな分野の研究者や大学院生に役立つ内容になっています。
 
「小地域」または「小領域」という用語は、郡、市町村、州などの地理的に小さい地域や特定の年齢・性別・人種などに細分された人口の小さなグループを指します。このような小さなグループの特性値の推定では、小さなグループからのデータのみに基づく直接推定は信頼性に欠ける可能性があります。これを小地域推定問題と呼び、小地域の信頼性の高い推定をどのように行うかが問題となります。信頼性のある小地域推定の需要が公共および私的なセクターで増加しているため、小地域推定は理論的および実践的な側面から積極的かつ広範に研究されてきました。
 
小地域推定の精度を向上させるために、関連する補足情報を共変量として取り込んだ線形混合モデルを用いると、そのモデルから導かれる経験最良線形不偏予測量は、小地域に対して信頼性のある推定を提供することができます。本書の前半部では、一般的な線形混合モデルにおいて経験最良線形不偏予測量の平均二乗誤差や予測区間の漸近近似やその2次漸近不偏推定法の導出を行い、その具体例として、小地域推定で利用されるFay-Herriotモデルと枝分かれ誤差回帰モデルに適用した結果を紹介します。また、線形混合モデルにおける仮説検定と変数選択に関する手法について解説します。
 
本書の後半部では、より多くの実用的な手法と例を含めて、混合効果モデルに基づく小地域推定の技術に焦点を当てます。特に、ランダム効果の分散の推定のための調整尤度法や小地域モデルのロバストな予測法など、実用的な問題を処理するための高度な理論を説明します。また、一般化線形混合モデル、データ変換を使用したモデル、非正規分布を持つモデルなど、非正規な応答変数を扱うための方法について解説します。最後に、小地域モデルの拡張として、ランダム効果の柔軟なモデリング、測定誤差モデル、ノンパラメトリックおよびセミパラメトリックモデル、分散が均一でないモデルについて紹介します。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 久保川 達也 / 2023)

本の目次

1章 はじめに
2章 一般混合モデルと最良線形不偏予測量
3章 予測の不確実性の測定
4章 小地域推定のための混合効果基本モデル
5章 仮説検定と変数選択
6章 小地域推定の基本モデルの最新の理論
7章 応答変数の非正規性のための小地域推定
8章 小地域基本モデルの拡張

関連情報

書評:
Desak Made Goldyna Rarasari 評  (Journal of Agricultural, Biological and Environmental Statistics  2023年5月16日)
https://link.springer.com/article/10.1007/s13253-023-00536-3

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