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書籍名

性/生をめぐる闘争 台湾と韓国における性的マイノリティの運動と政治

著者名

福永 玄弥

判型など

464ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2025年2月28日

ISBN コード

9784750358680

出版社

明石書店

出版社URL

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性/生をめぐる闘争

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『性/生をめぐる闘争』は、東アジアの現代史をセクシュアリティの政治という観点から考察する一冊です。本書で取りあげるのは、「アジアでもっともLGBTフレンドリーな社会」として知られる台湾と、性的マイノリティの権利保障が一進一退を続ける韓国です。日本による植民地統治からの解放後、アメリカ主導の冷戦体制への編入や民主化の進展の中で、社会運動、フェミニズム、宗教、国家がどのように絡み合ってセクシュアリティをめぐる文脈が変化してきたのかを考察し、「誰の死が悼まれ、誰の死が悼まれないのか」という根源的な問いに迫ります。本書はクィア研究と冷戦研究を横断し、軍隊・教育・司法・政党政治・社会運動など、さまざまな領域に焦点を当てながら、「包摂」「解放」「権利」という三つの観点から、性的マイノリティの闘争の歴史を描き出します。
 
本書の読み方の手がかりは三点です。第一に〈包摂〉。徴兵制や軍事主義に貫かれた社会で、同性愛者やトランスジェンダーがどのように兵士としての「メンバーシップ」を獲得したり剝奪されたりしてきたのかを検討します。台湾の「ゲイフレンドリーな軍隊」や韓国の「従軍する権利」をめぐる論争は、(軍隊からの/による)包摂/排除という単純な二分法では語れません。「合理的配慮」が名目となって当事者が制度の外へ押し出される瞬間や、包摂の名の下でマイノリティを軍事資源として利用する国家の思惑を描写します。
 
第二に〈解放〉。プライドパレードなど公共空間での実践をつうじて、歩く・声を上げる・集まることがどのように政治的な集合行為へと結実してきたかを示します。同時に、「LGBTフレンドリー」という看板の裏側――いかなる性的マイノリティが歓迎され、誰が不可視化されるのか――を問い直します。
 
第三に〈権利〉。同性婚や差別禁止法をめぐる政治を論じます。台湾では2019年にアジア初の同性婚が実現するまでに、社会運動と政党がどのように応答し合ったのかをたどります。他方、韓国では宗教右派のバックラッシュにより包括的差別禁止法の制定運動が繰り返し挫折し、さらにトランスジェンダーに対する排除言説がフェミニズム内部の亀裂を広げる状況を描きます。これらの歴史から、権利は所与の条件ではなく、獲得されたり奪われたり、多様なアクターによる闘争の場やプロセスであることがわかります。
 
研究の方法も本書の特徴です。当事者の声、運動団体の資料やフィールドでの観察、法、政策、メディア言説などを突き合わせ、比較歴史社会学の手法で考察を試みます。これにより、ある国の権利獲得の「成功/失敗」を単純に称賛・批判するのではなく、同時に生まれる新たな排除――たとえば中産階級に馴染むモデルのみが「模範市民」として承認される――を見落とさない重要な視点を提示しています。また「東アジア」という枠組みを提示することで、単なる比較に収まらない「地域」研究の可能性も模索しています。
 
読むことは、世界の見え方を更新する行為です。本書は、読者の「ふつう」をずらし、身近な場所にひそむ規範や境界線を見つけるための手がかりを与えてくれるでしょう。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 准教授 福永 玄弥 / 2025)

本の目次

序論
 1 はじめに
 2 先行研究の検討
 3 問い
 4 対象と方法
 5 構成
 6 用語と翻訳
 
第一部 〈包摂〉をめぐる闘争
 
第1章 台湾I――「ゲイフレンドリーな軍隊」の誕生
 1 冷戦と徴兵制
 2 軍事主義とジェンダー政治
 3 メンバーシップ
 4 「合理的配慮」としてのトランスジェンダーの排除?
 5 「ゲイフレンドリーな軍隊」の誕生
 6 小括
 
第2章 韓国I――「従軍する権利」を求めて
 1 国家の軍事化と徴兵制の定着
 2 軍事化された男性性とホモソーシャルな社会
 3 メンバーシップ
 4 「真のトランスジェンダー」とはだれか?
 5 「従軍する権利」を求めて
 6 小括
 
第二部 〈解放〉をめぐる闘争
 
第3章 台湾II――「革命いまだ成らず、同志たちよ努力せよ!」
 1 はじめに
 2 他者の言語、当事者の言語
 3 同志運動の興隆と公共空間をめぐる闘争
 4 「LGBTフレンドリーな台北」の形成
 5 小括
 
第4章 韓国II――「いつか訪れる解放」のために
 1 はじめに
 2 「変態性欲」から「人権」へ
 3 ソウル市児童生徒人権条例――性的マイノリティ運動と生徒人権運動の共闘
 4 ソウルクィアパレードの挑戦――「自由で安全なソウル」を求めて
 5 小括
 
第三部 〈権利〉をめぐる闘争
 
第5章 台湾III――「毀家・廃婚」から「婚姻平等」へ
 1 はじめに
 2 「ジェンダー平等」と婚姻平等
  2-1 同性婚法制化をめぐる歴史
  2-2 ジェンダー主流化のパラダイム・シフト
  2-3 性的マイノリティ運動と民進党の同盟関係
 3 「毀家・廃婚」から「婚姻平等」へ
  3-1 プロテスタント右派と保守の市民連帯
  3-2 「毀家・廃婚」から「婚姻平等」へ
 4 小括
 
第6章 韓国III――憎悪の動員と差別禁止法の挫折
 1 はじめに
 2 フェミニズム、ジェンダー主流化、保守回帰
  2-1 民主化と女性運動の発展
  2-2 ジェンダー主流化と保守回帰
  2-3 「女性優先フェミニズム」とトランス嫌悪言説
 3 国家人権委員会の挑戦とバックラッシュの台頭
  3-1 国家人権委員会と差別禁止法の推進と挫折
  3-2 プロテスタント右派の組織化と憎悪の動員
 4 小括
 
終論
 1 性/生をめぐる闘争
 2 補論――東アジアと複数形のホモナショナリズム
 
あとがき
謝辞
参考文献
 

関連情報

書評:
今週の一面:孟令斉 評「福永玄弥著『性/生をめぐる闘争』(明石書店)を読む非規範的な性/生を想像/創造するために――植民地主義・帝国主義・冷戦体制と性の政治の関係性を批判的に問う」 (『図書新聞』3692号 2025年6月21日)
https://toshoshimbun.com/product__detail?item=1749709261578x510022294115975200

佐橋亮 評「尊厳獲得 アジアの歩み」 (『読売新聞』 2025年6月15日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/reviews/20250616-OYT8T50041/
 
菅井理恵 評 (アジアと芸術digital | note 2025年5月25日)
https://note.com/asiaandarts/n/n1395eafa3812
 
倉橋耕平 評「脱植民地化と冷戦構造の共振性を乗り越える」 (『週刊読書人』3583号 2025年3月28日)
https://dokushojin.net/news/911/
 
書籍紹介:
「嘆かれるに値する生」と「嘆かれるに値しない生」を分かつもの――『生/性をめぐる闘争』」 (『じんぶん堂』 2025年3月6日)
https://book.asahi.com/jinbun/article/15652357

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