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白とグレーの表紙

書籍名

自発的関係社会のゲーム理論

著者名

奥野 正寛、 グレーヴァ香子

判型など

256ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年8月

ISBN コード

978-4-326-50515-9

出版社

勁草書房

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自発的関係社会のゲーム理論

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現代社会を、無数の人々が二人ずつのペアに分かれて「自発的継続囚人のジレンマ (Voluntarily Separable Repeated Prisoner's Dilemma; VSRPD)」というコンポーネントゲームをプレイする進化動学ゲーム (以下、VSRPD社会と呼ぶ) として分析する。VSRPDとは、マッチングプール (MP) でランダムにマッチした二人ーが、ペアである限り毎期囚人のジレンマ (PD) をプレイし、その期のPDの結果を見て翌期もペアを継続するか、期末にペアを離脱して次期初にMPで新たな相手とペアを組むかを選択する動学ゲームである。
 
本書はVSRPD社会の定常均衡を分析するが、様々な均衡クラスが存在するため、次の二つの均衡クラスに焦点をあてる。一つは信頼構築均衡であり、社会のすべてのメンバーが同一の信頼構築期間 (T) のT-期信頼構築戦略cTをプレイする。T-期信頼構築戦略とは、「最初のT期は非協力 (D) をプレイし相手もDの時だけペアを継続し、T+1期からは協力 (C) をプレイし相手もCの時だけペアを継続する」という非寛容戦略である。割引因子 (δ) が閾値を超えれば τ(δ)≥1 が存在し、ττ(δ) を満たす任意のTについて、社会のすべてのメンバーがcTをプレイする進化的に安定な均衡が存在する。しかし無数の人口を持つ現代社会で全員が同一の信頼構築期間Tにコミットすると考えるのは困難である。
 
次に本書は、対立的2戦略が共存する (一時的) ナッシュ均衡に焦点をあてる。戦略の一つは0期信頼構築戦略c0で、ペアが継続している限りCをプレイし、相手もCをプレイし続ける限りペアを継続する。今一つはd0戦略で、ペアが継続している限りDをプレイし、相手の行動の如何に関わらず期末にペアを解消する。δがある閾値を超えれば α(δ)∊(0,1) が存在し、社会にはc0d0だけが存在し、MPにおけるc0戦略の割合が α(δ) である局所的内部安定均衡Pcdが存在する。ここで「局所的内部安定」とは、既存の戦略割合の局所的変化に対して安定だという意味である。

Pcd均衡には、T期寛容戦略 (𝑐̃Τ) が侵入するとc0d0戦略を駆逐するため、Pcd均衡は進化的に不安定である。ここで𝑐̃0とは、T期間Dをプレイし何があろうと期末にペア継続を選ぶ「寛容行動」を取り、相手も寛容行動をとってペアがT期間継続した場合、T+1期からc0を継続戦略とする戦略である。他方、T期間寛容行動をとった後T+1期目以降の継続戦略をΤとすれば、Pcd均衡が存在する限り、任意のΤについてMPで𝑐̃Τ Τ も α(δ) 対 1 - α(δ) の割合で共存する「寛容均衡」が存在することを示した。

最終章では、コンポーネントゲームの冒頭で言葉を使ってチープトーク・コミュニケーションをする社会を考え、Pcd均衡に新語 (ネオロジズム) を使うc0が侵入した後の、もっともらしい進化動学下の不均衡経路を分析する。この経路上では当初は新語を使ったc0の人口が増えるが、いずれ新語を使ったd0が侵入し、最終的には新語を使ったPcd均衡に戻ることを示した。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 名誉教授 藤原 (奥野) 正寛 / 2025)

本の目次

第1章 はじめに
 1.1 問題意識
 1.2 自発的関係社会のゲーム
 1.3 既存の社会モデルとの比較
 1.4 本書の構成

第2章 ゲーム理論入門:囚人のジレンマを中心に
 2.1 囚人のジレンマ
 2.2 合理的プレイヤーとナッシュ均衡の考え方
 2.3 ゲームとナッシュ均衡の定義
 2.4 混合戦略とゲームの混合拡大
 2.5 展開形ゲームとナッシュ均衡の問題点
 2.6 部分ゲーム完全均衡
 2.7 無限回繰り返し囚人のジレンマ
 2.8 補論

第3章 進化ゲーム理論入門
 3.1 自発的関係社会のゲームとその均衡の考え方
 3.2 進化ゲームモデル
 3.3 進化的安定戦略
 3.4 中立的安定戦略
 3.5 繰り返し囚人のジレンマにおける進化的に安定な戦略∗
 3.6 補論:動学的安定性

第4章 自発的継続繰り返し囚人のジレンマ社会
 4.1 自発的関係社会のゲームの枠組み
 4.2 自発的継続繰り返し囚人のジレンマ(VSRPD)とVSRPD 社会のゲームの定式化
 4.3 戦略
 4.4 期待平均利得
 4.5 ナッシュ均衡の定義と予備的分析

第5章 信頼構築均衡
 5.1 信頼構築戦略と信頼構築均衡
 5.2 信頼構築均衡の進化的安定性∗
 5.3 信頼構築均衡の特徴と現実妥当性
 5.4 補論:協力行動のインセンティブとしての「失業」

第6章 対立的な2戦略が共存する均衡
 6.1 はじめに
 6.2 戦略と期待平均利得
 6.3 対立的な2 戦略からなるナッシュ均衡
 6.4 c0-d0 均衡の局所的内部安定性
 6.5 信頼構築均衡との期待利得の比較∗

第7章 寛容均衡
 7.1 はじめに
 7.2 寛容戦略
 7.3 寛容均衡
 7.4 寛容均衡群の進化的安定性に関する問題∗
 7.5 おわりに

第8章 VSRPD とコミュニケーション
 8.1 はじめに
 8.2 プレイヤー間のコミュニケーション
 8.3 コミュニケーションを伴うVSRPD 社会モデル
 8.4 人間社会の進化動学
 8.5 M-VSRPD におけるσN d0c0 戦略から始まる不均衡経路
 8.6 おわりに
 8.7 補論:M-VSRPD における各戦略の期待平均利得∗

参考文献
おわりに
索引
(∗ がついた節は理論的に高度な内容を含むものである。)
 

関連情報

書評:
瀧澤弘和 評 (『経済セミナー』通巻 749号 2026年4・5月号)
https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/9673.html
 
経済学の書棚: 前田裕之 評「さまざまな分野に拡大する「ゲーム理論」 体系的に学べる3冊」 (日経BOOKPLUS 2026年2月13日)
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/122100175/012700078/

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