東日本大震災の大津波が海底生態系に及ぼした影響を解明 大槌湾・船越湾を大震災の前後3年にわたって潜水調査した結果から
2011年3月に発生した大津波は、三陸沿岸域の海底生態系に大きな影響を及ぼしました。周期的に大津波が来襲する三陸沿岸の海底生態系の本質を理解するためには、大津波の前後で比較調査を行いその影響を把握する必要があります。しかし、大津波の発生時期を予測することは事実上不可能であり、また海底の調査は頻繁には行われないため、津波の直近の前後で比較調査が実施されることは稀でした。
東京大学大気海洋研究所の清家弘治助教らは、岩手県大槌湾と船越湾の砂泥底において、大津波の半年前(2010年9月)に潜水調査を偶然にも実施していました。そこで同研究グループは、大津波が発生した半年後(2011年9月)と一年半後(2012年9月)にも同様の調査を実施し、大津波が海底生態系に及ぼした影響を調べました。
津波前後の調査結果を比較したところ、大津波によって海底環境が大きく変化していることが判明しました。また、津波前には多く生息していた底生生物(貝やウニなど)の一部は、津波後には生息を確認することができませんでした。その後、震災から一年半後の調査では、津波後にいなくなった底生生物が再び生息していることが確認できました。つまり、海底生態系が津波によるダメージからの回復を既に開始していることがわかりました。
この成果は、アメリカの科学雑誌「PLOS ONE」オンライン6月8日号で公開されました。
論文情報
Koji Seike, Kotaro Shirai, Yukihisa Kogure,
“Disturbance of shallow marine soft-bottom environments and megabenthos assemblages by a huge tsunami induced by the 2011 M9.0 Tohoku-Oki earthquake”,
PLOS ONE Online Edition Online Edition: 2013/6/8 (Japan time), doi: 10.1371/journal.pone.0065417.
論文へのリンク