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T2K 実験、電子型ニュートリノ出現現象の存在を明らかに! 宇宙の反物質が消えた謎の解明への足がかり

掲載日:2013年7月31日

ニュートリノ振動は、素粒子ニュートリノが長距離を飛行するうちにその種類(ニュートリノには電子型、ミュー型、タウ型の3種類がある)が変化する現象のことをいいます。現在までに、東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設スーパーカミオカンデ実験などにより、大気ニュートリノの振動や太陽ニュートリノの振動が発見され、ニュートリノの性質が一つ一つ解明されてきました。ニュートリノ振動を説明する標準的な理論では、さらにもう一つ、第三のニュートリノ振動モードが存在することがわかっており、実験による検証が必要とされていました。その方法の一つが、加速器により作られたミュー型ニュートリノの電子型ニュートリノへの変化の測定です。

© 東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設およびT2Kコラボレーション
電子型ニュートリノ出現事象候補の例
円筒形をしたスーパーカミオカンデの3 次元イベントディスプレイで、内壁に配置された光電子増倍管のうち、光を捉えたものに時間別の色をつけて表示している。電子型ニュートリノと水との反応によって電子が発生し、その電子が、電子・陽電子シャワーを引き起こす。電子・陽電子シャワーは、チェレンコフ光を発させ、その様子がリング状に捉えられているのがわかる。なお、本事象は東日本大震災からの復旧の後、2012 年3 月に初めて得られた電子型ニュートリノ出現事象の候補である。

ミュー型ニュートリノが飛行中に電子型ニュートリノへ変化する、電子型ニュートリノ出現現象の発見を最大の目的とするT2K実験(東海-神岡間長基線ニュートリノ振動実験)において、2013年4月までに遠隔検出器スーパーカミオカンデにて取得したデータを解析したところ、電子型ニュートリノに起因すると考えられる事象が28事象発見されました。これは出現現象がない場合に期待される4.6事象より多く、背景事象の統計的な揺らぎにより起こる確率はわずか1兆分の1以下であることを意味します。すなわち、電子型ニュートリノの出現現象が起きている決定的な観測結果が世界で始めて得られたのです。

今回の結果により、電子型ニュートリノ出現確率の精密測定の時代に突入したと言えます。T2K実験では、現在の10倍のデータ量を今後収集する見通しです。また、遠隔検出器としてスーパーカミオカンデの約20倍の大きさを持つハイパーカミオカンデを新たに建設する計画の検討も行われています。今後さらに研究を進めることは、素粒子や宇宙の謎、特に、なぜ宇宙は物質が支配的であり反物質が少ないか、という謎を解くための最大の手がかりを与えるものと期待されています。

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