ナノDDSによる難治性膵臓がんの標的治療 遺伝子改変マウス(自然発症膵がんマウス)による効果の実証
近年、ドラッグデリバリーシステム(DDS)を利用したがん標的治療は、抗がん剤などの薬剤をがん組織に選択的に届けることによって、副作用を示すことなく優れた治療効果をもたらす画期的ながん治療法として注目されています。DDSの有効性はこれまでに固形がん(白血病以外のがんで臓器に塊となって発生するがん)治療において、外科的に腫瘍を移植してがんを発生させた事例ついて数多く報告されてきましたが、自然発症した固形がんに対する報告例はありませんでした。
今回、東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻/大学院医学系研究科臨床医工学部門の片岡一則教授の研究グループは難治がんとして知られる膵がんを自然発生する遺伝子改変マウスを用いて、高分子材料の自己組織化により形成される高分子ミセル型DDSの有効性を検証しました。その結果、白金抗がん剤を内包した高分子ミセルは、自然発生膵がんに効果的に集積し、優れた治療効果(マウスの生存期間を大幅に延長)をもたらすことが明らかになりました。
膵がんは、有効な診断・治療法が確立されておらず、5年生存率が最も低いことから“難治がんのなかの難治がん”として知られていますが、本研究の成果は膵がんに対する画期的な治療法の実現に繋がるものと期待されます。
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論文情報
Horacio Cabral, Mami Murakami, Hironori Hojo, Yasuko Terada, Mitsunobu R. Kano, Ung-il Chung, Nobuhiro Nishiyama, Kazunori Kataoka,
“Targeted therapy of spontaneous murine pancreatic tumors by polymeric micelles prolongs survival and prevents peritoneal metastasis”,
Proceedings of the National Academy of Sciences 110 (28) 11397-11402 (2013), doi: 10.1073/pnas.1301348110.
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