希少難治性小児肝疾患の薬物治療の確立に光明 肝移植に代わる治療法へ向けて
患者数が極めて少ないまれな疾患(希少疾患)の1つに、子供の肝臓に関する病気で、無治療の場合には思春期前に肝不全に陥り、死に至る難病があります。この難病は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型(Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis type 2; PFIC2)と呼ばれ、Bile Salt Export Pumpと呼ばれる遺伝子の変異が原因となる疾患です。PFIC2に対する治療法は現状では、肉体的、金銭的に負担の大きい肝移植のみであることから、薬物による治療法の開発が切望されています。
今回、東京大学大学院薬学系研究科の林久允助教、楠原洋之教授らの研究グループは、獨協医科大学越谷病院、済生会横浜市東部病院と共同で、PFIC2患者を対象とした臨床研究(病気の予防や診断、治療方法の改善や、病気の原因を明らかにする等を目的とし、人を対象として実施される研究)を実施し、尿素を合成する仕組みに異常が生じる尿素サイクル異常症の治療薬として承認されているフェニルブチレートという医薬品が、PFIC2に対して副作用なく、治療効果を示すことを見出しました。フェニルブチレートの服用により、PFIC2患者の肝機能に関する生化学検査値は正常化し、PFIC2に特徴的な肝臓の病理組織学的所見である胆汁の色素が詰まった状態を表す胆汁栓、巨細胞性変化は著明に改善しました。
今後、治験(薬事法上の承認を得るために実施される臨床試験)を経てフェニルブチレートのPFIC2に対する効能が追加承認されれば、肝移植に代わる新規治療法として普及することが期待されます。
論文情報
Sotaro Naoi, Hisamitsu Hayashi*, Takeshi Inoue, Ken Tanikawa, Koji Igarashi, Hironori Nagasaka, Masayoshi Kage, Hajime Takikawa, Yuichi Sugiyama, Ayano Inui, Toshiro Nagai, and Hiroyuki Kusuhara,
“Improved liver dysfunction and relieved intractable pruritus after 4-phenylbutyrate therapy in a patient with progressive familial intrahepatic cholestasis type 2”,
The Journal of Pediatrics Online Edition: 2014/2/5, doi: 10.1016/j.jpeds.2013.12.032.
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