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活動的な火山の内部を透視活写 ミュオグラフィによる活動的な火山の透視活写

掲載日:2014年3月18日

火山の大規模噴火は時として社会のシステムに大きな影響を与えるため、高精度な噴火及び噴火推移の予測が重要である。これまでに、宇宙線に含まれる素粒子ミューオン(注1)を用いて物体を透視するイメージング技術(ミュオグラフィ)を用いて、浅間山、エトナ火山など世界の活動的火山の透視画像が得られてきた。しかし、これらは全て静止画像であり、流路内のマグマの時間変動をとらえることが不可能であった。

CC-BY (c) Hiroyuki K. M. Tanaka, Taro Kusagaya, & Hiroshi Shinohara, Nature Communications, Vol.5, No. 3381。ミュオグラフィ動画の時系列変化。 フレームレートは10フレーム/月。6月16日、6月30日にはそれぞれ、400mと200mの噴煙と火映が観測されたが、マグマ(オレンジ~赤色)がそれに合わせて上昇している様子が分かる。噴火後は一定時間後にマグマが下降し、上部に空洞(黄色~緑~青)が残されている。

CC-BY © Hiroyuki K. M. Tanaka, Taro Kusagaya, & Hiroshi Shinohara, Nature Communications, Vol.5, No. 3381。ミュオグラフィ動画の時系列変化。 フレームレートは10フレーム/月。6月16日、6月30日にはそれぞれ、400mと200mの噴煙と火映が観測されたが、マグマ(オレンジ~赤色)がそれに合わせて上昇している様子が分かる。噴火後は一定時間後にマグマが下降し、上部に空洞(黄色~緑~青)が残されている。

東京大学地震研究所の田中宏幸教授らは世界に先駆けてミュオグラフィによるマグマの上昇下降のレントゲン動画撮影に成功した。動画撮影には、火山の内部のマグマの動きを捉える検出器の信号対雑音比を100倍以上向上した、多層式ミュオグラフィ検出器の開発が鍵となった。新しく開発した検出器を用いて、2013年6月4日に噴火警報が発令された薩摩硫黄島内部のミュオグラフィ透視動画を撮影し、マグマ頭位(注2)の上昇と噴火が同期していることを確認した(図)。

本研究の成果により、ミュオグラフィを用いたデータのリアルタイム動的処理による火山内部の3次元の高速可視化は、火山噴火の新たな噴火モニタリングシステムを提供するものであり、既存の噴火予測方法を高度化できると期待される。

(注1)素粒子の一種。電子と似たような性質を持つが、重さは電子の207倍、およそ100万分2秒で崩壊する不安定粒子である。
(注2)マグマ流路内におけるマグマ柱の先端部分の位置をいう。

プレスリリース

論文情報

Hiroyuki K.M. Tnaka, Taro Kusagaya, Hiroshi Shinohara,
“Radiographic visualization of magma dynamics in an erupting volcano”,
Nature Communications Online Edition: 2014/3/10 (19:00 Japan time), doi: 10.1038/ncomms4381.
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