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昆虫界の“最難”折りたたみ:ハネカクシの翅の隠し方を解明 ハイスピードカメラによる折りたたみ方法の解析

掲載日:2014年12月3日

昆虫の翅に見られる巧妙な折りたたみは、昆虫学者だけでなく航空宇宙工学や機械工学の研究者にとっても興味深い研究テーマです。中でもハネカクシの仲間(甲虫目ハネカクシ科)は収納効率や展開速度の点から最も進化した折りたたみを使っている事が知られています。その最大の特徴は折りたたみパターンが左右非対称、つまり左の翅と右の翅の折りたたみ方が違う点に集約されますが、この非対称性が何故生じるのかに関してはこれまで明らかにされていませんでした。

ハネカクシの腹部は自由に動かせるようにむき出しになっており、他の甲虫より鞘翅が短いため、よりコンパクトに後翅を折りたたまなくてはならない。この難問をハネカクシは左右非対称の折線パターンと腹部を使った独特の折たたみ方法によって解決している。(c) 2014 Kazuya Saito

© 2014 Kazuya Saito.
ハネカクシの腹部は自由に動かせるようにむき出しになっており、他の甲虫より鞘翅が短いため、よりコンパクトに後翅を折りたたまなくてはならない。この難問をハネカクシは左右非対称の折線パターンと腹部を使った独特の折たたみ方法によって解決している。

東京大学生産技術研究所の斉藤一哉助教は、九州大学総合研究博物館の丸山宗利研究室の協力を得て、このハネカクシの翅の左右非対称な折りたたみの謎を解明しました。斉藤助教らはハネカクシの中でも飛ぶのが得意な海岸性のハネカクシ(オオアバタウミベハネカクシ)に着目しハイスピードカメラを使ってハネカクシの離陸と翅の収納動作を解析し、具体的な折りたたみプロセスと左右の翅の展開図を示すことに成功しました。

今回明らかにした折りたたみメカニズムは、高い収納効率に加え迅速な展開を実現できます。さらにハネカクシの折りたたみは左右非対称なだけでなく、左右のパターンを入れ替えて折りたためることが分かりました。これは、一つの翅が2つの折りたたみパターンで折れることを意味しています。これらは人が作った展開構造には見られない革新的なアイディアであり、人工衛星用太陽電池パドルを初めとする展開構造から傘や扇子などの日用品のデザインに至るまで広範な分野にインパクトを与えると期待されます。

本研究の成果は2014年11月4日に米国科学アカデミー紀要電子版に掲載されました。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Kazuya Saito, Shuhei Yamamoto, Munetoshi Maruyama, Yoji Okabe,
“Asymmetric hindwing foldings in rove beetles”,
Proceedings of the National Academy of Sciences Online Edition: 2014/11/04 (Japan time), doi: 10.1073/pnas.1409468111.
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