アルツハイマー病の病理と神経活動の関係を探る 「光遺伝学」が脳アミロイド蓄積のメカニズムを解明
東京大学大学院医学系研究科の岩坪 威教授を含む国際研究グループは、慢性的に高い神経活動がアルツハイマー病の脳におけるアミロイドβ病の蓄積を高めることをマウスにおいて発見しました。
アルツハイマー病の脳では、アミロイドβと呼ばれるタンパク質の断片が溜まってくることが認知症を招く原因と考えられています。脳の神経細胞はシナプスと呼ばれる接合部位を介してつながり、電気的な興奮を伝えること(神経活動)により機能を営んでいます。しかし、これまで神経活動とアミロイドβの蓄積の関係は十分に分かっていませんでした。
本国際研究グループは、アルツハイマー病の症状を再現したマウスの記憶の中枢として知られる海馬という重要な脳の部位に入る神経経路の活動を5ヶ月間にわたって慢性的に高めると、海馬に蓄積するアミロイドβが増加することを発見しました。本成果は、マウスの脳における神経活動を、光を用いて制御することのできる、最新の光遺伝学の実験手法を取り入れることで得られたものです。
本研究成果は、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの蓄積が、長期間に及ぶ高い神経活動によって増大することを初めて示した点で重要です。今後、アルツハイマー病の予防や治療を進める上で、神経活動をどのように整えるのが有効かについて手がかりが得られることも期待されます。
なお、本研究は東京大学大学院医学系研究科の山本 薫大学院生、種井善一大学院生、橋本唯史特任講師、尾藤晴彦教授、米国スタンフォード大学のKarl Deisseroth教授、ワシントン大学のDavid Holtzman教授らと共同で行われたものです。
論文情報
Chronic optogenetic activation augments Aβ pathology in a mouse model of Alzheimer disease", Cell Reports Online Edition: 2015/5/1 (Japan time), doi:10.1016/j.celrep.2015.04.017.
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