トポロジカル絶縁体の表面ディラック状態の量子化を実証 低消費電力素子への応用に期待

トポロジカル絶縁体は、内部は電流を流さない絶縁体状態ですが、表面は電流を流す金属状態という特殊な物質です。表面の金属状態は、ディラック電子とよばれる質量を持たない電子が存在するディラック状態を示します。トポロジカル絶縁体はエネルギーをほとんど使わずに電気を流すことから、低消費電力素子への応用に向け研究が活発化しています。しかし、実際のトポロジカル絶縁体の内部では、結晶の欠陥などによってわずかに電流が流れてしまい、表面のディラック状態だけの純粋な電気伝導を取り出すことはこれまで難しいとされていました。
今回、東京大学大学院工学系研究科の十倉好紀教授、川﨑雅司教授らの 共同研究グループは、トポロジカル絶縁体の1つ「(Bi0.12Sb0.88)2Te3」(Bi:ビスマス、Sb:アンチモン、Te:テルル)の高品質な薄膜の作製手法を確立し、ほとんど結晶欠陥のない(内部に電流が流れることがない)薄膜の作製に成功しました。これを用いて電界効果型トランジスタ構造を作製し、試料内部の電子数を少しずつ変化させながらホール抵抗を測定したところ、ホール抵抗が量子化抵抗値(約25.8キロオーム)で一定となり、試料が整数量子ホール状態になっていることを確認しました。
これは、表面のディラック状態だけの純粋な電気伝導を取り出すことに成功したことを示すものです。 この成果は、高速で低消費電力の素子への応用が期待されます。
論文情報
Quantum Hall effect on top and bottom surface states of topological insulator (Bi1-xSbx)2Te3 films", Nature Communications Online Edition: 2015/4/14 (Japan time), doi:10.1038/ncomms7627.
論文へのリンク(掲載誌、UTokyo Repository)