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世界最小ハードフェライト磁石の開発に成功 磁気記録用のナノ新素材を発見

掲載日:2016年1月5日

© 2016 Shin-ichi Ohkoshi.世界最小ハードフェライト、イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe2O3)磁性粒子の保磁力の粒径依存性。他のフェライト磁石の磁化の外部磁場依存性と粒径依存性を比較のために表示している。

世界最小ハードフェライト、イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe2O3)磁性粒子の保磁力の粒径依存性。他のフェライト磁石の磁化の外部磁場依存性と粒径依存性を比較のために表示している。
© 2016 Shin-ichi Ohkoshi.

東京大学大学院理学系研究科の大越慎一教授らの研究グループは、十ナノメートル以下で世界最小の鉄の酸化物を主成分とした磁石(ハードフェライト)の開発に成功しました。この磁石は、鉄と酸素からできているため、環境にやさしく低価格で大量生産に適しており、次世代のアーカイブ用大容量磁気記録などの高密度磁気記録技術への利用が期待できます。

酸化鉄からなるフェライト磁石は、永久磁石、磁気記録媒体、電磁波吸収材料、磁性流体などに広く用いられてきました。フェライト磁石は、磁気記録媒体として注目を浴びていると同時にその高密度化の要求が高まっています。中でも、高密度化に向けて大きな保磁力を持つナノメートルの大きさの磁性粒子の開発が重要な課題となっています。フェライト磁石は、ナノメートルの大きさで必要とされる化学的安定性を持っていますが、これまでに知られているものでは、粒径を小さくすると磁石としての性質を保てないため、十ナノメートル以下のハードフェライト磁石はありませんでした。

今回研究グループは、イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe2O3)を5~40ナノメートルの間の粒子の大きさで系統的に合成する新技術を開発し、イプシロン型-酸化鉄が7.5 ナノメートル以上の大きさで磁石の性質(強磁性相転移)を示すことを明らかにしました。磁気テープやハードディスクなどの磁気記録メディアでは、3キロエルステッド(kOe)以上の保磁力が必要ですが、今回の材料は、8 ナノメートルの大きさで5 kOeの保磁力を示しており、超高密度磁気記録用の素材としての可能性を有しています。また、今回、イプシロン型-酸化鉄は、強磁性だけでなく、自発電気分極も持っていることを理論的にも実験的にも示したため、最小のマルチフェロイックフェライト粒子と言えます。

「私たちが開発したフェライト磁石は、ビッグデータのアーカイブ用大容量記録メディアとしてグーグルなどでも使用され、昨今、産業界でその復活がたいへん注目を浴びている磁気テープストレージの未来材料としての可能性をもっています」と大越教授は話します。「また、イプシロン型-酸化鉄はフェライト磁石の中で最も色が薄く、透明カラー磁性塗料やプリンター用のカラー磁性トナーなどの新しい用途も考えられるかもしれません」とのことです。

プレスリリース

論文情報

Shin-ichi Ohkoshi, Asuka Namai, Kenta Imoto, Marie Yoshikiyo, Waka Tarora, Kosuke Nakagawa, Masaya Komine, Yasuto Miyamoto, Tomomichi Nasu, Syunsuke Oka, and Hiroko Tokoro, "Nanometer-size hard magnetic ferrite exhibiting high optical-transparency and nonlinear optical-magnetoelectric effect", Scientific Reports 5, 14414 (2015), doi:10.1038/srep14414.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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