スマトラ地震により東北日本の地殻の状態が次々と変化 誘発地震活動や地震波速度変化などの連鎖反応


地殻内で起きた地震活動などの連鎖的な変化
スマトラ地震によって浅い正断層型の地震が誘発され、地殻が引き伸ばされた結果、内陸側に圧縮の力が生じ、それが地殻の変形や地震波の速度を速めた。
© 2016 小原一成
東京大学などのグループは、スマトラ地震によって東北日本の地震活動などが連鎖的に誘発されたことを示し、地殻内に生じたゆらぎが広範囲に及ぶことを明らかにしました。この地殻内相互作用の解明は、地震発生の物理そのものを理解する上で大変重要です。
地震は、断層面に蓄積された力が限界に達すると、断層両側の岩盤がずれ動くことによって生じます。時には、何千キロメートルも離れた大地震から、地球の表面に沿って伝わる表面波によって他の地震が引き起こされることもあります。
今回、東京大学地震研究所の小原一成教授らの研究グループは、米国ロスアラモス国立研究所やマサチューセッツ工科大学と共同で、防災科学技術研究所の高感度地震観測網Hi-net等の連続データ等を活用し、2012年4月に発生したスマトラ地震の表面波が日本列島を通過した際に、地震が誘発されただけでなく、より広範囲な地殻のひずみや地殻内の地震波速度の変化を連鎖的にもたらしたことを明らかにしました。また、福島県沖で誘発された地震活動は、南西方向に1日約70 kmの速度で移動し、それと同時に、沿岸部では地殻が圧縮される変形が検出されました。さらに、沿岸部の広い範囲で地震波速度が増加し、約3週間継続しました。
「以上の観測結果は、次のように解釈されます」と小原教授は話します。「2011年の東北地方太平洋沖地震の影響で、破壊寸前の状態にあった福島県沖の浅い地殻内で、スマトラ地震の表面波による力の変化が正断層型の地震を誘発し、その誘発地震によって地殻が東西方向に引き伸ばされる変形が生じ、その隣接域の沿岸部では逆に地殻が圧縮されました。その結果、それまで東西方向に引き伸ばされる力によって開いていた沿岸部の地殻内の亀裂が、新たに生じた圧縮の力で閉鎖し、地震波速度が増加した、というものです」と続けます。
本成果は、広範囲に及ぶ地殻内で連鎖的に起きた活動の変化を高精度に明らかにした世界で初めての研究であり、これらの地殻内で起きている諸現象の相互作用の解明は、地震発生の物理を理解する上で大変重要です。
論文情報
Cascading elastic perturbation in Japan due to the 2012 Mw 8.6 Indian Ocean earthquake", Science Advances Vol. 1, no. 9, e1500468, doi:10.1126/sciadv.1500468.
論文へのリンク(掲載誌、UTokyo Repository)