風に合わせて飛び方を変える鳥 ヨーロッパヒメウのエネルギー節約戦略
東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授らは、北海道大学、英国生態学水文学研究センターの共同研究グループともに、水面からの離陸を繰り返す海鳥が、常に風上に向かって飛び立ち、巡航飛行中は風向や風速に応じて速度を変化させることで、移動に必要なエネルギーを節約していることを明らかにしました。
水鳥が飛び立つときに風上に向かうという逸話は長らく語られてきましたが、その確固たる証拠は得られていませんでした。航空力学分野の研究からは、飛ぶ鳥の速度には2種類の特徴的な値が存在することが指摘されていました。1つは、できるだけ少ないエネルギー消費で飛び続けるための最小パワー速度、2つめはそれよりもやや速く、限られたエネルギー消費で最も長距離移動できる最大航続距離速度です。
今回、研究グループは、海鳥の一種であるヨーロッパヒメウ(Phalacrocorax aristotelis)の背に、衛星の電波を利用することによって移動経路を把握できるGPSロガーと羽ばたきの頻度と強さを測定できる加速度計を取り付けて、2008年、2009年と2010年の6月に24時間ほど野外データを14羽から得ました。その結果、ヨーロッパヒメウは限られたエネルギー消費で最も長距離移動できる最大航続距離速度を選択していることが判明しました。
「近年開発された小型の加速度計や軽量のGPSロガーのおかげで、正確で詳細な鳥の追跡が可能となり、ようやく長年の質問にはっきり答えることができるようになりました」と佐藤教授は話します。「今回の発見は、ヨーロッパヒメウや他の鳥たちが、将来の気候変化によってどのような影響を被る可能性があるのか示唆してくれます」と続けます。
論文情報
European shags optimize their flight behavior according to wind conditions", Journal of Experimental Biology Online Edition: 2016/2/4 (Japan time), doi:10.1242/jeb.131441.
論文へのリンク(掲載誌)