海洋ゴミへの反応はウミガメの食性により異なる 餌生物と海洋ゴミの混同が少ないアカウミガメと混同するアオウミガメ
東京大学大気海洋研究所の福岡拓也大学院生および佐藤克文教授を中心とする国際共同研究グループは、自然の環境下で海洋ゴミに遭遇したウミガメ類の反応がウミガメの食性によって異なっており、動物を食べるアカウミガメに比べて藻類を主に食べているアオウミガメの方が高い確率で遭遇した海洋ゴミを飲み込んでいることを明らかにしました。
これまでの胃の内容物を調べた研究により、海洋ゴミの誤飲量はアカウミガメ(Caretta caretta)とアオウミガメ(Chelonia mydas)で異なることが示されてきましたが、自然環境下で海洋ゴミを誤飲する様子を観察することが困難であったため、なぜ海洋ゴミの誤飲量が種間で違うのかについてはわかっていませんでした。
今回、研究グループは、海洋ゴミに遭遇した時の反応をウミガメの種類によって比較するために、2007年から2015年にかけてアカウミガメ10個体とアオウミガメ6個体の背中に動物に搭載可能なビデオカメラを取り付けて、それぞれ60時間と52時間のビデオ映像を得ました。その結果、主に底生生物やクラゲ類など、能動的に動く動物を食べていたアカウミガメは、遭遇した海洋ゴミの内の17%(12回中2回)を飲み込んだのに対して、海藻を主体に時々クラゲ類を食べていたアオウミガメは62%(34回中21回)を飲み込んでいたことがわかりました。このことから、海洋ゴミと似た形で波間に漂う海藻を主な餌とするアオウミガメの方が、アカウミガメに比べて海洋ゴミを餌と混同しやすいことが示唆されました。
「ウミガメが誤って海洋ゴミを誤飲してしまう誤飲は、ウミガメを死に至らしめる脅威として問題視されています。しかし、ウミガメは人為起源の海洋ゴミ以外にも鳥の羽や小石、木の葉などの自然ゴミも多く飲み込んでいました。また、同時に行なった排泄物分析では、自然ゴミと共に海洋ゴミは排泄されており、海洋ゴミが直接の死因とはなっていませんでした」と佐藤教授は話します。「海洋ゴミの誤飲がウミガメ類の健康にどのような影響を及ぼすのかを調べるために、引き続き研究していく事が重要です」と続けます。
本研究は、米国のナショナルジオグラフィックと日本海洋科学振興財団と共同で行われたものです。
論文情報
The feeding habit of sea turtles influence their reaction to artificial marine debris", Scientific Reports Online Edition: 2016/06/17 (Japan time), doi:10.1038/srep28015.
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