生体膜リン脂質による細胞増殖活性化機構 ホスファチジルセリンによる転写共役因子YAPの活性化
東京大学大学院薬学系研究科の田口特任准教授と新井洋由教授らの研究グループは、細胞の増殖を制御する特定の信号(シグナル)伝達経路が生体膜リン脂質による制御を受けることを初めて明らかにしました。本成果により今後、生体膜リン脂質を制御するタンパク質が、がん細胞の増殖を抑制する新規創薬ターゲットとなることが期待されます。
生体膜はリン脂質二重層で構成されていますが、細胞を外界と区別する障壁としての機能以外の役割に関しては不明な点が多く残されています。
今回研究グループは、特定のリン脂質の近傍にあるタンパク質を同定する新しい手法を開発し、ホスファチジルセリンというリン脂質の一種ががん細胞の増殖に関わるHippo-YAPシグナルと呼ばれる特定の伝達経路を制御することを初めて明らかにしました。
本研究によって開発したホスファチジルセリン近傍タンパク質の同定方法は他のリン脂質にも応用可能であり、本手法によって生体膜リン脂質の新たな機能が明らかになっていくことが期待されます。
「私たちは今回、生体膜を構成する特定のリン脂質の近傍にあるタンパク質を同定する新しい手法を開発し、生体膜がHippo-YAPシグナルを制御する場となることを初めて明らかにしました」と新井教授は話します。「オルガネラ(細胞小器官)脂質研究の新たな展開が期待できます」と田口准教授は今後の展望を語ります。
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論文情報
Endosomal phosphatdylserine is critical for the YAP signalling pathway in proliferating cells", Nature Communications Online Edition: 2017/11/01 (Japan time), doi:10.1038/s41467-017-01255-3.
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