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3Dコンクリートプリンティングの産学連携デザインコンペを開催

掲載日:2023年1月16日

工学部建築学科・社会基盤学科のスタジオ型講義を通して3Dコンクリートプリンティングの産学連携デザインコンペを開催

「太海駅に設置される3Dコンクリートプリンティング*(3DCP)製ベンチのデザイン」を課題として、工学部建築学科と社会基盤学科が産学連携のスタジオ型講義(建築学科4年生向け設計製図第七、および社会基盤学科3年生向け少人数セミナー)を合同開講し、この授業が国内初の建設用3DCPによる実施デザインコンペとなりました。成果物である2基のベンチは、2022年12月14日に建替工事を終えたJR東日本太海駅にて、実際に座ることができます。

国内初の建設用3DCPによる実施デザインコンペで提案された駅舎ベンチのデザイン案とテストプリント

本コンペは、土木学会の「3Dプリンティング技術の土木構造物への適用に関する研究小委員会」に委員として参加している、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)および3DCP事業者4社(會澤高圧コンクリート株式会社、株式会社Polyuse クラボウ(倉敷紡績株式会社)、日揮グローバル株式会社)との産学連携により実現しました。

講義の初回に、建替えによりリニューアルされる内房線(JR東日本千葉支社管内)太海駅に新たに設置するベンチが設計対象であり、無人駅であるためメンテナンスフリーであること、海の近くであるために塩害**に対する高い耐久性が求められること、利用者の衣服が破けないような表面仕上げであることなどの設計要件が説明されました。その後、3DCP事業者から各社の技術紹介がなされ、デザインするにあたっての注意点などが解説されました。翌週からは実際の3Dプリンタの見学、実験、さまざまな分野の専門家によるレクチャーと各学生のデザイン案へのアドバイスという形で授業は進みました。

講義の様子

5月に行われた一次選考段階では14のデザイン原案が学生から提案され、3DCP事業者4社がその中から3案を選びました。その後、4社も加わった学生との協働3チームが技術的検討を加え、7月に行われた二次選考段階で出された最終案(関連リンク参照)の中から、會澤高圧コンクリート+学生チームによる「後ろ髪を引かれるベンチ」がJR東日本千葉支社によって最優秀案に選定されました。9月に製造と性能試験が行われ、10月には太海駅に搬入設置されました。駅舎の工事はその後も続き、2022年12月14日の新駅舎への切り替えに伴い、ベンチも供用開始されました。


JR東日本太海駅に設置された2基の3DCP製ベンチ

このような3DCPに関する実施コンペは世界でも初めてだと思われます。本コンペを通して、各社の保有する技術の特長や課題が共有されるとともに、発注者の要望を満たすために必要な具体的な技術開発も明らかとなりました。また、学生にとっては、デザイン案を考えることに留まらず、事業者との技術的検討、発注者への技術提案、契約・性能試験・施工・検査などの経験を通し、より実践的な教育を受けることができました。企業と学生が協働する産学連携のスタジオ型講義は、これまでにない教育の在り方を提示するとともに、3DCPの普及展開を促し、建設分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に大きく貢献すると考えられます。今回はベンチを対象としたコンペでしたが、今後は建築・土木構造物への3DCPの適用へ発展していくことが期待されます。

* 3Dコンクリートプリンティングの略。一般的に普及している樹脂を材料とした3Dプリンタの吐出材料をセメント系の材料とした技術。

** 海水に含まれる塩分によって、鉄は錆(さび)が生じやすくなり、鉄筋コンクリートの場合でも、内部の鉄筋まで塩分が到達すると錆が生じ、コンクリートにひび割れが生じる。

[1] 学生の発表動画

・「太海を彩る波型ベンチ」:株式会社Polyuse+学生チーム

https://youtu.be/y-Tr_G-kvLs

・「後ろ髪を引くベンチ」:會澤高圧コンクリート株式会社+学生チーム

https://youtu.be/fUbT_t3HvTw

・「新しい定位置」:クラボウ&日揮グローバル株式会社+学生チーム

https://youtu.be/fg5ULGi64Ho

[2] 授業の概要、提案内容

・BMEスタジオ(設計製図第七、設計製図1B・2B)

 https://bme.t.u-tokyo.ac.jp/bme_studio/

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