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大学院総合文化研究科の藤井貞和名誉教授が日本芸術院賞を受賞

掲載日:2023年4月24日

2023年3月28日、日本芸術院は令和4年度日本芸術院賞の受賞者9名を発表しました。第二部(文芸)には本学名誉教授の藤井貞和先生のお名前もあります。発表された授賞理由には、「氏は、国文学、特に『源氏物語』等の研究の泰斗であり、また古文学、歌謡、南島論に健筆を揮う文学研究の第一人者である。加えて、特筆すべきは、氏は生涯にわたって創作、詩作を、その学問研究と両立させ続けて来たことにある。詩集『よく聞きなさい、すぐにここを出るのです。』で、その両立の持続はピークに達した。学問と創作のこのような両立と持続は誠に稀有のもので偉才折口信夫(釈迢空)に比肩すべき成果として、それを顕彰するものである」とあります。

藤井先生は1942年東京生まれ。1966年に本学文学部を卒業、1972年に同大学院人文科学研究科国語国文学専門課程博士課程を満期退学し、東京学芸大学教授などを経て、1995年より2003年まで本学大学院総合文化研究科教授を務められました。

授賞理由にも書かれているとおり、藤井先生の研究活動は創作活動と一続きであり、折口信夫を「詩人学者」と評した先生のことばはそのまま先生自身にも当てはまります。昨年7月に刊行された詩集『よく聞きなさい、すぐにここを出るのです。』は、少数民族ヤクートの神話など、民間伝承に取材した作をちりばめる一方で、『万葉集』『懐風藻』『源氏物語』『太平記』『神皇正統記』といった古典の世界にも縦横に出入りしています。

特筆したいのは「物語するバクーニン」。先生にとってライバルとも戦友ともいうべき存在だった故三谷邦明氏が、「死者の書」の大津皇子よろしく死の床から蘇ったかと思うと、かつて切磋琢磨して取り組んできた物語研究がアナキストの活動に重ねられる。80歳を超えた藤井先生ですが、若き日にバリケードに立てこもった情熱は少しも衰えていないことが窺えます。読者として励まされることこの上もありません。
 
藤井貞和 著 『よく聞きなさい、すぐにここを出るのです。』 思潮社
 
文責 品田悦一(大学院総合文化研究科 教授・言語情報科学専攻)
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