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附属地球表層圏変動研究センター長の阿部彩子教授に日本学士院賞授賞が決定

掲載日:2022年3月17日

令和4年3月14日、学術上特にすぐれた論文、著書その他の研究業績を対象とする日本学士院賞が発表され、附属地球表層圏変動研究センター/気候システム研究系の阿部彩子教授の受賞が決定しました。
 
研究題目:
氷期-間氷期サイクル10万年周期の機構の解明
 
日本学士院による授賞理由:
地球上では直近の約100万年において、氷期と間氷期が10万年周期で交互に現れました。この気候変動の要因は、地軸の傾きなど地球軌道要素の変動による日射量分布の変化にあるとされました(ミランコビッチ仮説)。阿部彩子氏らは、気候モデルMIROCを用いて過去の地球軌道要素を初めとする様々な条件下の地球の気候を再現するとともに、新たに開発した氷床モデルIcIESと組み合わせることにより、10万年氷期-間氷期サイクルを再現することに成功しました。また、この気候変動の鍵が日射量の変化だけでなく、気候と氷床の不可逆的応答や地殻マントルの役割、さらに大気中二酸化炭素濃度−氷床相互作用などにあることを指摘しました。地球システムに内在するフィードバックが実際の気候変化に及ぼす影響を数値実験で明らかにする一連の古気候モデリング研究は、地球環境変動や生命の進化を理解する上で、重要な礎となります。

■用語解説
MIROC(Model for Interdisciplinary Research on Climate)
気象庁の数値予報モデルを基に東京大学、国立環境研究所、海洋研究開発機構などで共同開発された気候モデル計算コード。太陽放射、地球軌道要素や大気組成を入力とし、地球全体の大気と海洋、陸面の数百からの数千/数十層の格子の放射伝達や大気海洋大循環に伴う気候の時空間変化が計算され、「仮想地球」の気候数値実験(シミュレーション)に用いられる。

氷床
地球上の降雪起源の氷が長年堆積し流動する大陸規模の氷河。過去には北米、ユーラシアの各大陸に広がったが、現在は南極とグリーンランドにのみ存在する。

IcIES(Ice sheet model for Integrated Earth-system Studies)
氷床を非ニュートン粘性流体として温度や流動を求め、基盤地形や地殻マントルの影響を考慮した氷床の成長や後退を表現した日本で開発された数値モデル。

地球システムに内在するフィードバック
気候や地球の複雑システムには、気温変化を増幅したり抑制したりする効果があり、各々正と負のフィードバックと呼ばれる。氷期-間氷期サイクルでは、通常の気温と水蒸気や雪氷などの表層環境の間の数年スケールのフィードバックに加えて、気温と氷床量、植生、深層海洋循環や大気中二酸化炭素量などの間で数十年~数千年の長期的なフィードバックがあり、多重解の存在など気候変化理解の鍵となる。

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