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人類はいかにして島に渡ったか 人口シミュレーションによる「漂流説」の検討

掲載日:2020年8月5日

テスト航海で与那国島から西表島を目指す2艘の草束舟。国立科学博物館「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」より。撮影:海部陽介(2016年7月11日)
© 2020 海部陽介

東京大学大学院理学系研究科の井原泰雄講師、国立民族学博物館の池谷和信教授、野林厚志教授、国立科学博物館の海部陽介研究グループ長(現、東京大学総合研究博物館)は、更新世の人類による島しょ進出について分析し、偶然の漂流により10人程度のグループが島に渡ったとすれば、その子孫が集団として持続した可能性があることを示しました。

後期更新世の人類は海を渡り、日本の琉球列島のような島々に進出しました。意図的な移住だったとすれば、当時の人類の優れた航海技術がうかがえますが、移住が偶然の漂流の結果だった可能性も排除できません。偶然の漂流とすれば、その子孫が人口を維持するために何人の漂着者が必要だったのか、長年答えのない議論が続いてきました。

井原講師らは、移住者の子孫が集団として持続する可能性を、人口シミュレーションにより評価しました。近現代の狩猟採集民が家族単位で移動することに着目し、家族が乗った舟の偶然の漂流を、男女同数の若者たちによる意図的な移住と比較しました。狩猟採集民として現実的な出生率と死亡率の組合せを網羅的に検討した結果、偶然の漂流よる集団の持続可能性は、意図的な移住の場合と比べて大きく劣ることがわかりました。また、偶然の漂流による集団が持続するためには、多くの条件の下で、10人程度の漂着者が必要であることが示されました。

images10人以下の移住者に由来する集団の持続確率  
49通りの出生率と死亡率の組合せにわたる、偶然の漂流(青)と意図的な移住(ピンク)による集団の持続確率の分布を表す。
© 2020 井原 泰雄
 

例として、3万5000~3万年前に琉球列島の全域にホモ・サピエンスが出現しています。琉球列島は島が小さく遠いうえ、黒潮を含む複雑で強い海流があり、持続可能な人数の漂着は困難と考えられます。このことを踏まえると、今回の成果は、琉球列島への人類の進出が意図的な移住であったことを示唆します。一方、100万年前頃のインドネシアでは、原人が狭い海峡を数回越えてフローレス島へ渡っています。こちらは一般に偶然の漂流と考えられていますが、この海域の島が大きいことを考慮すると、津波などで流された男女10人ほどの同時漂着は、非現実的ではないと思われます。

「当時の航海には大きな危険が伴っていたと考えられます」と井原講師は話します。「危険を承知で海に出るからには何か強い動機があったはずで、それが人類の世界拡散の原動力になったのかもしれません」

論文情報

Yasuo Ihara, Kazunobu Ikeya, Atsushi Nobayashi, Yosuke Kaifu, "A demographic test of accidental versus intentional island colonization by Pleistocene humans," Journal of Human Evolution: 2020年7月6日, doi:10.1016/j.jhevol.2020.102839 .
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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