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134億光年先の最も遠い銀河を同定 最遠方銀河から酸素と炭素を検出

掲載日:2020年12月16日

最遠方銀河GN-z11
上図: GN-z11の画像。矢印の先にあるのが宇宙で最も遠い銀河GN-z11。
下図: 銀河GN-z11からの炭素の近赤外線スペクトル。銀河を出た時は波長1907オングストローム、1909オングストロームの紫外光でしたが、赤方偏移されて波長2.28マイクロメートルの赤外線として観測されました。このほかに波長2マイクロメートルの酸素も観測されました。
©2020 柏川伸成

東京大学大学院理学系研究科の柏川伸成教授の研究グループは、銀河GN-z11から3本の紫外線輝線を検出し、この銀河が134億年かなたにある銀河であることを確定しました。この銀河は、これまでハッブル望遠鏡の観測によって、非常に遠方にある銀河ではないかと言われていましたが、正確な距離は測定されていませんでした。今回の観測結果でこの銀河が赤方偏移10.957であることが初めてわかり、人類が目にした最遠方の銀河であることが確定されました。

宇宙で最初に生まれた銀河はいつどのように生まれたのだろう?この謎に対する答えを求めて、人類はこれまで宇宙の果てにいる最も遠い銀河を探し続けてきました。これまでも次々に最遠方記録が塗り替えられ、わたしたちの知る宇宙のフロンティアはどんどん広がってきました。そんな中、最近ではGN-z11という銀河が研究者の間で注目を浴びていました。この銀河はハッブル宇宙望遠鏡によって発見され、遠方銀河に特徴的なスペクトルの段差らしきものが見つかったことから、おそらく約134億光年先の銀河だろうと推測されていましたが、地球からの正確な距離は測定されていませんでした。

今回、研究グループはアメリカのケック望遠鏡(口径10m)に装備された最新鋭の近赤外線分光器を用いてこのGN-z11を観測し、炭素イオンと酸素イオンが放つ光を検出することに成功しました。この結果、この銀河が134億光年(赤方偏移10.957) かなたにある銀河であることが判明しました。これはこれまで観測された銀河の中で最も遠い距離となります。今回検出された炭素と酸素の光は現在の銀河には見られない特殊な物理状況を示唆しており、太陽の10億倍という星の総質量と、たった7000万年という若い年齢が推測されることから、この銀河は生まれてから急速に成長したことが考えられます。 今回の発見で、人類の知る宇宙の果てはまた広がりました。しかしこれで終わりではありません。来年にはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)という高性能の宇宙望遠鏡が打ち上げられる予定で、宇宙最遠方のフロンティアは飛躍的に広がることが期待されています。

「正直、観測前にはこれが本当に遠方銀河なのか半信半疑でしたが、観測結果を見たときに確信に変わりました。宇宙はいつも驚きと感動を与えてくれます」と柏川教授は話します。

論文情報

Linhua Jiang, Nobunari Kashikawa, Shu Wang, Gregory Walth, Luis C. Ho, Zheng Cai, Eiichi Egami, Xiaohui Fan, Kei Ito, Yongming Liang, "Evidence for GN-z11 as a luminous galaxy at redshift 10.957," Nature Astronomy: 2020年12月15日, doi:10.1038/s41550-020-01275-y.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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