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海洋アセノスフェアの「柔らかさ」のその場観測に成功 アセノスフェアを診る新たな手段

掲載日:2019年5月15日

今回開発した海底地震計システム
海洋底に設置した海底地震計システム。海底とのカップリングを改善するために、計測ユニットを埋めてある。また記録ユニットの振動ノイズを軽減するため、計測ユニットを記録ユニットから離して設置した。
© 2019 Nozomu Takeuchi.

東京大学地震研究所の竹内希准教授、川勝均教授、塩原肇教授らの共同研究グループは、独自の長期海底地震観測技術を開発し、海洋リソスフェア・アセノスフェアの柔らかさの精密比較に初めて成功しました。

地球の海の下にはリソスフェアと呼ばれる硬い岩盤があり、柔らかいアセノスフェアの上で運動していると考えられています。しかしなぜアセノスフェアがリソスフェアよりも柔らかいのかはわかっていないうえ、計測の困難さから、アセノスフェアの柔らかさを直接観測する手段もほとんどありませんでした。

研究グループは「ふつうの海洋マントルプロジェクト(通称)」を推進し、長期海底地震観測技術を開発し、アセノスフェアの物性をその場観測しました。地震波減衰特性という岩石の柔らかさの指標に着目し、独自の地震波伝播シミュレーション手法を駆使して、海洋リソスフェア・アセノスフェアの柔らかさの精密比較に成功しました。この計測技術を通じ、室内岩石実験データと地球観測データを直接比較できるようになったため、アセノスフェアを診る新たな手段を獲得したと言えます。

今後の研究を通じ、岩石が柔らかくなる原因や条件の詳細が室内実験から解明されれば、アセノスフェアの柔らかさの原因が特定できる可能性があります。

「海洋域での地震計測は、重要性は認識されているものの、データ取得の難しさや計測精度に多くの研究者が手を焼いているのが現状です」と竹内准教授は話します。「地震研究所海半球観測研究センターのメンバーが中心となって共同研究を実施しましたが、それぞれのメンバーの知恵と技術を結集して困難を克服することができました。強力な共同研究体制が確立したことは、今回の成果とともに大きな資産となると思います」。

論文情報

N. Takeuchi, H. Kawakatsu, H. Shiobara, T. Isse, H. Sugioka, A. Ito, & H. Utada , "Determination of Intrinsic Attenuation in the Oceanic Lithosphere-Asthenosphere System," Science: 2017年12月22日, doi:10.1126/science.aao3508.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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