力を加えると大きく色が変わる分子を発見 電気の流れやすさも変化


機械的な力を加えることにより折れ曲がり型の分子配座をもつ黄色い粉はねじれ型の分子配座をもつ濃い緑色の粉に変化し、溶媒の蒸気にさらすことにより、再びもとの黄色に戻る。動画のURL: http://www.matsuo-lab.net/file/FAmovie.mp4
© 2018 Yutaka Matsuo.
東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻の松尾豊特任教授らの研究グループは、機械的刺激により見た目の色(吸収色)を大きく変える物質を合成することに成功しました。
押すなどの機械的な外部刺激により性質を変化させる材料はメカノクロミック材料と呼ばれ、センサーやスイッチなどに応用可能な新しい機能性材料として興味が持たれています。機械的刺激により発光色を変える材料はこれまでに多くありましたが、吸収色を大きく変える物質はあまり存在しませんでした。
今回研究グループが見い出した新しい物質は、フルオレニリデン-アクリダンと名付けられた分子で、結晶の状態では黄色ですが、結晶を砕くと濃い緑色に変化します。これは通常の有機分子の結晶を砕くと色がやや薄くなることと逆の現象となります。この色が濃くなる新しい現象の鍵は、機械的応力というマクロな力を、モルフォロジ変化を通して分子の形態変化というミクロな変化につなげたことにあります。この変化により物質中の電気の流れやすさも増大させることにも成功しました。
この材料は機械的刺激という入力情報を、見た目の色と電気特性の変化という2つの出力情報に変換できるため、色が変わるタッチパネルや光学的および電気的に検出する応力センサーなど、新しい有機電子素子に応用される機能性材料となることが期待されます。
「有機太陽電池に用いる材料を開発する過程で、こすることによって劇的に色が変化する分子を偶然に発見しました。この現象の背景にある科学を解き明かすのに、1年以上かかりました」と松尾特任教授は話します。
論文情報
Tsuyoshi Suzuki, Hiroshi Okada, Takafumi Nakagawa, Kazuki Komatsu, Chikako Fujimoto, Hiroyuki Kagi, Yutaka Matsuo, "A fluorenylidene-acridane that becomes dark in color upon grinding – ground state mechanochromism by conformational change," Chemical Science: 2017年11月14日, doi:10.1039/c7sc03567e.
論文へのリンク (掲載誌, UTokyo Repository
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