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レゲット教授が見た日本と東大 ノーベル賞物理学者と東大の長年の交流を放送大学のテレビ番組で特集

掲載日:2020年4月14日

2019年秋、東京大学本郷キャンパスを訪れたサー・アンソニー・ジェームス・レゲットイリノイ大学名誉教授 ©放送大学(タイトル横画像も)

サー・アンソニー・ジェームス・レゲット教授は、世界的な物理学者です。ロンドン生まれのレゲット先生(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校名誉教授、本学名誉博士)は2003年、ヘリウム3の超流動現象を理論的に解明した先駆的な業績が認められ、ノーベル物理学賞を受賞しました。先生の理論は、リニアモーターカーから量子コンピューティング、そして宇宙の起源の解明にいたるまで、多くの分野で応用の可能性がある一般性の高いものです。

一方、オックスフォード大学出身のレゲット先生の日本、特に東京大学との長年の交流については、そこまで知られていなかったかもしれません。先日、放送大学のBSチャンネルでドキュメンタリー番組が放送され、東大の物理学研究者との温かく真摯な交流と、今もなお日本の若い研究者に与え続ける影響について取り上げられました。

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2019年6月、東京カレッジで講演するレゲット先生 写真: 兼本玲二

放送大学は2019年秋、レゲット先生を日本に招き、半世紀にわたる日本での交流の足跡をたどりました。原点は1960年代にポスドク研究員として1年間を過ごした、京都大学の理学部物理学教室。当時、地元の大学生と同じアパートで暮らし、友人を驚かすほどの日本語能力を身に付けました。

今でも日本の科学者の間で読み継がれている「Notes on the Writing of Scientific English for Japanese Physicists(日本人物理学者のための、科学英語論文執筆ガイド)」と題した記事を寄稿したのもこの頃です。

日本物理学会誌に投稿されたこの記事は、日本の物理学研究者の英語ライティングの特徴について初めて詳細に記述。英語を母語とする研究者に研究をよりよく理解してもらうために、論文を書く際の論理展開の構造を変え、記述の曖昧さをなくすべきと主張しました。

そして番組では、レゲット先生の東大理学系研究科・理学部との交流を取り上げています。先生は1973年~1974年、東大で特別に講師を務めました。この年は、後のノーベル賞受賞につながる、ヘリウム3という通常のヘリウム原子より軽い安定同位体の超流動現象を理論化した論文を発表した翌年で、研究にとって重要な時期でした。

超流動とは、極低温において物質中の粒子の運動への抵抗が突然なくなることです。液体なら粘性がなくなり、金属なら電気抵抗がなくなります(=超電導)。先生は、当時最先端の超流動研究をすべて日本語で講義し、物理学を志す多くの東大生を魅了しました。

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来日中のレゲット先生(左)と対談する羽田正東京カレッジ長 ©放送大学

番組には、東大理学系研究科・理学部の福山寛教授(当時、2020年3月に定年退職)も登場。福山先生は、レゲット先生の素晴らしい業績のみならず、研究者との交流の真摯さにも感銘を受けた日本人物理学者の一人です。レゲット先生と同じく低温物理学を専門とする福山先生は、2011年から3年間、レゲット先生を東大に招聘し、理論物理学が専門の上田正仁教授と協力して、毎年1か月の集中講義を企画しました。1973年の講義の感動をもう一度若い研究者に与えたい、という思いがあったからです。

その後も交流は続きます。レゲット先生は、2019年2月に東大に創設された東京カレッジの名誉カレッジ長に就任。東京カレッジは、2050年の人類の課題と解決策を模索することを目的として2019年2月に東大に設立された機関です。先生は2019年6月、東京カレッジで講演を行いました。さらに、2019年秋には、レゲット先生と、東京カレッジ長の羽田正大学執行役・副学長が番組の中で対談し、国際的かつ分野を超えた交流の重要性について議論しました。

レゲット先生は番組の最後に、日本の若い科学者にメッセージを残します。自らの好奇心に従うこと、自分で問いかける問題が、実はすでに解決済みかどうかと心配しすぎないこと、誠意をもって行った研究結果は、たとえすぐに役立たなくても大切にしまっておくこと。そして最後に、先生自身が東大との長きにわたる交流によって示したように、教育と研究のどちらにも従事する仕事についたならば、研究と同じぐらい教育にも真剣に取り組みなさい、とアドバイスします。

「それは学生のみならず、あなたにとってもきっと役立つはずです」

特別講義 レゲット教授が見た日本~ノーベル賞科学者による異文化交流~」は、4月18日(土)、夜8時15分からBS231chにて再放送されます。ぜひご覧ください!

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